この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第163巻収録。英国で指折りの宝飾デザイナー・コルダーは、故ダイアン妃から制作を依頼された宝石にまつわる、彼女との思い出を大切にしていた。しかし、その宝石が彼女の死後、現皇太子夫人に奪われていたことが発覚。怒りに震えたコルダーは、宝石を消去するようゴルゴに依頼する……。
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社会現象ダイアナ・フィーバー
プリンセス・ダイアンのモデルは言わずと知れたダイアナ元皇太子妃のことだろう。ダイアナ妃は嫁に当たるキャサリン妃やメーガン妃とは比べ物にならないくらい、世界中が熱狂した英国王室の人気者であった。
日本でも大人気で“ダイアナ・フィーバー”と呼ばれるほどの社会現象となった。当然、その死も大きなスキャンダルとして取り扱われた。『イングリッシュローズ』ではダイアンの死が描かれるので併読必須だ。『イングリッシュローズ』のダイアンの方が実物のダイアナにより似た描写となっていように思えるが、どうだろうか。
地味ながら技巧を凝らした狙撃
依頼の狙撃を成立させるには、三つの技巧が求められる。第一に揃ったカメリア夫人に屈ませて、ペンダントが身体から離れた一瞬を狙う事。第二にチェーンからダイヤだけを吹き飛ばすためにダイヤの一点を狙撃する事。第三にカメラ型の銃で狙撃を行う事。
ゴルゴは当たり前のように三つをこなしているがそれは過去に『ピリオドの向こう』でコンラッド(依頼の時点ではエリノア)の左耳のイアリングを狙撃した経験、『死闘ダイヤ・カット・ダイヤ』で58面体のダイヤを一撃で砕く狙撃の経験があるからか。今エピソードの狙撃は地味ではあるが、ゴルゴならでは技巧を凝らした醍醐味が味わえる。
職人ノエル・コルダー
宝石職人ではなく武器職人であれば、ゴルゴから信頼を得られたに違いないノエル・コルダー。ダイアンに「自分らしく生きようとする事は……大きな代償がいるものです」と嫌味なくさらりと言ってのけるところなどまさにゴルゴ好みであろう。
このあたりは『螺旋』の時計職人ハインツによく似た偏屈さだ。ハインツはゴルゴから腕時計の発注を受ける唯一の職人だ。コルダーのセリフは時宜を得てダイアンに刺さっている。宝石職人と言えば上述の「死闘カット・ダイヤ・カット」にも職人気質の宝石職人が登場する。こちらは職人の方がゴルゴのことを気に入って“愛弟子”扱いしている。
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片山 恵右
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