この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第64巻収録。イラン陸軍のアリ大佐は、戦地で戦う兵士たちに十分な量の武器を供給できず焦っていた。原因は国際的詐欺組織の暗躍で、発注したはずの武器が輸送中に姿を消してしまうためだった。詐欺組織の存在を知ったアリ大佐は、組織の壊滅をゴルゴに依頼する……。脚本:北鏡太
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複雑なイランの国内情勢
本作でメインに描かれているのはイラン情報部のラシッド少佐。漂流船内での言動は元より、ロイズ(イギリスの保険団体)代理人や武器商人に対して堂々と渡り合っているところを見ると、なかなかのタフガイらしい。
また部下のソフィに対して、「IRP(イスラム共和党)とパスダラン(革命防衛隊)にはかぎつけられるなよ」と忠告するところも興味深い。イラン政府内の縄張り争いはかなり根深そうだ。捜索の途中で戦火に巻き込まれたソフィは死の間際にゴルゴの暗躍があったことを知る。その事実とともにソフィの死を伝えられたラシッドの表情が痛々しい。
武器商人との直接対決
1980年から1988年まで続いたイラン・イラク戦争。本作では武器や弾薬の不足に悩むイラン軍や、イスラム革命により官僚達が追放されたことで混乱するイラン政府の内情が描かれている。近年こそ融和の傾向がみられるイランと各国の関係ながら、当時は世界、特に西側諸国からの孤立が明白だった。
そうした厳しい世界情勢において、ロンドンで行われた海難審判でイランに対して公平な姿勢が向けられるのは、世界に名だたるロイズが関わるだからだろうか。それとも相手が武器商人としても悪名高いギリシャの海運業者のニコマコスだったからか。
依頼人の死亡もゴルゴには無関係
国際詐欺団の一掃をゴルゴが請け負ったとの事情を把握したラシッド。ニコマコスのあわてた行動を思い出しながらも、「依頼主のアリ将軍が死亡した今……ゴルゴ13はその依頼を遂行するだろうか?」と疑問に感じてしまう。
ゴルゴファンであればラシッドの心配は杞憂と承知しているはずで、ゴルゴは高速で走る車に乗ったニコマコスのこめかみを撃ち抜いている。『ニューヨークの謎』『“E”工作』などでも一度受けた案件は依頼人が死亡したにもかかわらず完璧に遂行しているゴルゴ。こうした依頼人へ誠実さがゴルゴに対する信頼を増しているのだろう。
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研 修治
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