この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第49巻収録。真夏のマンハッタンで男女あわせて10人の変死体が発見される。奇妙なことに全員が冬服を着ていた。事件を追う新聞記者リッキーは、被害者の死因には麻薬が関係していることを掴む。唯一の生き証人・リスを追跡するリッキーに忍び寄る暗殺者の影。そしてリッキーの周囲に見え隠れするゴルゴの目的とは……? 脚本:須摩鉄矢
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ゴルゴにすがりつくシュールな一場面
本話では、新聞記者のリッキーと看護婦の弟のウッドが狂言回し役となり、怪死事件の裏に潜む陰謀に迫っていくことになる。
当初は誤解から揉み合いになる二人だが、このとき、電車で偶然居合わせたゴルゴに、リッキーを殺人犯と勘違いしているウッドが「助けてくれーっ! こいつは人殺しなんだっ! 殺し屋なんだ!」とすがりついて助けを求めるシーンが大変シュール。いや、殺し屋はキミの目の前にいる方だって。面倒事を好まないゴルゴが我関せずとばかりに「ス……」と席を移動するのも面白い。ちなみに今回、ゴルゴは一言も言葉を発さない。
依頼人が死んでも仕事を完遂するゴルゴ
ひとたび引き受けた依頼は何があろうと完遂するのがゴルゴのポリシー。依頼人が死亡した場合でも構わず仕事を続けるのは、『動作・24分の4』などでも描かれている通りだ。特に本話は、依頼人の「もし私が死んだら」というリクエストに応え、ゴルゴが標的に「天罰」を下すという痛快な流れ。
リッキーはラストでその可能性に思い至りながら、タダ儲けになる状況で律儀に依頼を完遂する殺し屋などいるはずがないと思い直す。だが、読者はその常識がゴルゴには当てはまらないことを知っている。金よりも矜持のために動く男、それがゴルゴなのだ。
堕胎の可否をめぐるアメリカの複雑な状況
本話で重要なタームとなるのが堕胎手術。中絶反対の声が根強いアメリカでは、1973年に有名な「ローVSウェイド判決」で中絶禁止が違憲とされたものの、21世紀に入ってからも各州で新たな中絶禁止法の整備が続いている。
トランプ大統領が就任してからはさらに中絶規制の流れが加速し、ローVSウェイド判決も覆されるのではないかと言われている。命の価値を人が量ることは難しい。『許された命』では妊婦の殺害を延期して胎児を生かしたこともあるゴルゴだが、逆にもし胎児殺しの依頼があったなら、表情一つ変えず応じるだろうか……?
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東郷 嘉博
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