この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第75巻収録。イラン・イラク戦争の最中、イラクはネイビーシールズの元部隊長・レッドマンを教官として雇い、特殊部隊の編成に動き出していた。その情報を得たイラン軍は、ゴルゴに特殊部隊の殲滅を依頼する。ゴルゴは潜入を試みるが、なぜかゴルゴの動きは敵側に筒抜けだった……。脚本:K・元美津
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20ページ以上もの拷問に耐えるゴルゴ
「ゴルゴ・ナビ」でも「拷問好きなら必見」と取り上げられるほど、長丁場の拷問シーンが繰り広げられる本話。拷問好きの読者がどれだけいるのかは疑問だが、ジープで引き回す、逆さ吊りで水に沈めるなどの拷問を長時間受けても全く音を上げないゴルゴの体力と精神力は流石の一言だ。
他のエピソードでもそうだが、力技での脱出も可能そうな状況で、敢えてゴルゴが責め苦に耐え続けているのは、自分を殺す気はないと分かった上で敵の隙を見計らっているという意味が大きいのだろう。彼を拷問する者は、その時点で彼の策に嵌っているとも言えるのだ。
女スパイの正体を炙り出すゴルゴの作戦
本話のゴルゴは、数日かけて泳ぎのリハーサルを行い、タイムの短縮を確認した上で初めて依頼を引き受けるという入念な手順を踏んでいる。受任後に敵地潜入のシミュレーションをするのは他の話でもあるが、返事前にというのは珍しいパターンだ。そして物語は、このリハーサルを手伝っていた女工作員が実は敵側のスパイだったという展開を見せる。
ゴルゴは泳ぎのタイムを知っていたのは彼女だけだとしてその正体を見破っているが、スパイの発見も当初から依頼に入っていたそうなので、入念なリハーサル自体が彼女の正体を炙り出す罠だったのだろう。
いかなる宗教にも頼らない現実主義
イラン・イラク戦争が舞台であることと関連してか、ゴルゴの宗教観がいつになく詳細に語られる本話。「彼が信じ、信じることのできるのは、目に見えるもの……つまり“現実”だけだ!」というイラン軍高官の言葉は、現実主義者のゴルゴの本質を的確に表しているといえる。
一方、同シーンで語られているように、「ゴルゴダの丘でキリストを十字架にかけた13番目の男」という極めて宗教的なモチーフを自身の通り名にもしているゴルゴ。それが神に頼る者達への皮肉なのか、神であろうとも殺してみせるという矜持の表れなのかは定かでない……。
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東郷 嘉博
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