この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第102巻収録。全てを手に入れた実業家・ウィルキンス。彼は退屈極まりない日常を打破すべく、巨額を投じて自分だけの仮想世界を作り上げる。そこは無数の罠が張り巡らされた巨大な城だった。そこへゴルゴをおびき出し、ゴルゴとの「殺るか殺られるか」のスリルを味わうことで生を確認するウィルキンスだったが……。脚本:ながいみちのり
スポンサーリンク
クレイジーな暴走老人との対決
タイトル通りのクレイジーな話だ。ゴルゴと勝負しようと考えたりそれだけのためにこのような物を作り上げたりするなど、人生哲学を持たない暇を持て余した金持ちというのは、実に不憫である。シャノンも、ウィルキンスにゴルゴの話をしたことを後悔しているが、まさに口は災いの元である。
自分の分身に銃を向けられるゴルゴにはさすがに焦りの色がみられる。暇にまかせて金に糸目をつけずに作り上げたクレイジーなトラップから、ゴルゴは果たして脱出できるのか。『AIメティス』同様、テクノロジーと人間との決闘を描いた異色作である。
機械は常に誤作動の怖れあり
ゴルゴがウィルキンスの作ったテーマパークで死闘を繰り広げるシーンは、ユル・ブリンナー主演の映画「ウエスト・ワールド」を思わせる。ロボット達は客に撃たれるだけで客は絶対に撃たれない設定にしてあるはずのテーマパークで、ロボット達が客を襲うというストーリーだ。
原因は不明だが、コンピュータープログラムが誤作動して逆の動作をするようになった可能性か、ロボットが「もうこんな生活イヤ!」とキレたかのどちらかだろう。ゴルゴは、精密機械の決定的な弱点をついた作戦で逆襲にでたが、熱を感知して乱射するシーンが笑える。
むやみに高い報酬には気をつけろ
ウィルキンスはひきこもり同様の生活をしていたため、ゴルゴも依頼人の調査に限界があったのだろう。『鬼畜の宴』同様、欲望だけに生きる人間が、金も暇もあり余ると、ろくな事を思いつかない。それにつきあわされたムトーやディックもあわれだ。
妙に払いの良い仕事はそれだけ高いリスクが伴うことを悟ったときは遅かった。ムトーが「オモチャの王国か」とつぶやいているが、現在ならウィルキンスも、仮想現実・メタバースの世界に好きなだけお金をつぎ込み、オモチャの王国で、果てしない欲望の限りに遊びほうけることができたのだろうが。
この作品が読める書籍はこちら
野原 圭
最新記事 by 野原 圭 (全て見る)
- ゴルゴ13:増刊第100話『獣の爪を折れ』のみどころ - 2024年8月18日
- ゴルゴ13:第485話『欲望の輪廻転生』のみどころ - 2024年7月30日
- ゴルゴ13:第520話『未病』のみどころ - 2024年7月29日