この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第183巻収録。親イスラエル組織ファタハの首領・ナビールの暗殺を請け負ったゴルゴ。狙撃地点に向かうものの、ナビールのアジトには厄介な防衛装置「ウェポン・ウォッチ」が完備されていた。この装置を攻略しないかぎり、ナビールを仕留めることはできないが……。
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最新の防衛装置とローテク戦術の対決
最新の防衛装置「ウェポン・ウォッチ」を備えた標的を、人力でのトンネル掘りというローテク戦術で出し抜くミッションが見所となる本話だが、例によってこの装備も空想の産物ではない。
2005年には、赤外線センサーで敵の発砲位置を判別する「ウェポン・ウォッチ」をアメリカ軍が実戦でテスト中であることが報じられており(※)、その後も同様の技術は進化を続けているようだ。なお、発砲前に狙撃手を探知する「狙撃前探知」は、未だ実現には遠いようだが、仮にそうした技術が実用化される日が来ても、我らがゴルゴは打開策を見つけるに違いない……。
必死の脱出にいつになく憔悴した?ゴルゴ
本作の見せ場は、何と言っても地下トンネルを利用したゴルゴの脱出シーン。無人機のミサイルから逃れるため、文字通り一秒を争う速度でトンネルを駆け戻るのだが、何コマにもわたって描かれるゴルゴの必死の表情は必見だ。
その後も疲れが残っていたのか、罠にかけられた場面では焦った表情をしていたり、救出後にも憔悴した顔で礼を述べていたりと、いつになく「百面相」なゴルゴが拝める。また、トンネル建設中のシーンでは、使い走りの子供に食事を分けてやる姿も印象的。組織の信頼を得るためだとしても、ゴルゴの人情味が垣間見える一幕だった。
寡黙さこそがプロフェッショナルの証
終盤、サイードの裏切りで地下に閉じ込められたゴルゴは、「よく喋る男だと思った」「そういうエージェントは信頼出来ない、それが鉄則だ」と彼に言い放つ。自らも汗水流してトンネル堀りに加わっていた彼が、内心ではゴルゴを切り捨てる算段を秘めていたのは読者にはショックだが、用心深いゴルゴには最初からお見通しだったのだろう。
「よく喋る男は信頼できない」――これを逆にすれば、まさにゴルゴ自身のことでもある。一流のプロほど、余計なことは喋らず寡黙に仕事をこなすもの。それを誰より体現しているのがゴルゴという男なのだ。
※出典:WIRED「敵の発砲位置を瞬時に特定する新技術、米軍がテスト中」(2005年11月1日)
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東郷 嘉博
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