この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第59巻収録。長い年月によって証人の記憶や証拠が消えてしまい、進行が困難を極めるナチス裁判。そんななか祖国ドイツを裏切り、ユダヤ人びいきの裁判を進める裁判長の暗殺依頼がゴルゴに舞い込む。条件は特殊な拳銃を使用し、その拳銃を現場に残してくるという奇妙な依頼だった……。脚本:きむらはじめ
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依頼人の執念!ヒトラーの銃で標的を討つ
今回の依頼の特徴は、依頼人の保管していた古い拳銃で狙撃を行い、現場に銃を残してほしいというこだわり。本話のラストで、その銃の指紋がヒトラーのものだとわかり、驚愕する捜査員達の表情は必見だ。
ヒトラーの愛銃といえば、ネオナチとゴルゴの死闘を描いた名シリーズの完結編『崩壊 第四帝国 狼の巣』では、ヒトラーの遺品である黄金のワルサーが登場していた。あちらは一度も発砲されずに終わったが(そもそも純金製では軟すぎて発砲に耐えられないため、実在したとしても装飾用と思われる)、こちらの銃は立派に標的を撃ち抜いている。
ゴルゴにフォルクスワーゲンは窮屈そう?
様々な名車を乗りこなすことも多いゴルゴだが、本話での彼はフォルクスワーゲンのゴルフという珍しい選択をしている(「ゴルゴ・ナビ」によれば「西ドイツでの任務のため、目立たないように」とのこと)。
シュレーゲル裁判長への狙撃もこの車内から行われるのだが、前部座席に横向きに陣取り、窮屈そうに足を投げ出しているゴルゴの体勢がちょっと面白い。しかも使用武器はヒトラーの形見の古びた拳銃……。彼にとってはハンデにもならないのだろうが、この狙撃の後、いそいそとワーゲンを運転して現場を去る彼の姿を想像すると口元が緩んでくる。
本話から40年近く経っても続くナチス裁判
「もはや戦後ではない」が我が国の流行語となったのは1956年だが、ドイツの戦後は未だに終わっていないとも言える。本話で取り上げられた「ナチス裁判」は21世紀に入っても続いており、つい最近(2020年7月)も、93歳の元看守に執行猶予付きの有罪判決が言い渡されたばかりだ。
歴史の悪は糺されなければならないが、個人を咎めることにどれほどの意味があるのか……。本話の依頼人がゴルゴに言った「日本の国民は賢明だよ! 少なくとも自国の歴史を裁こうなどとはせん!」という言葉も、あながち的外れではないのかもしれない。
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東郷 嘉博
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