この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第183巻収録。日本の自動車メーカー「タイガ」は、走行距離で世界一の性能をもつEVの開発に着手。開発リーダーの及川は、バッテリー開発を委託するパッソーナ社に期待するが、及川にライバル心を燃やすパッソーナの弧桐は、他メーカーと合併し独自のEV開発に乗り出す……。
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次世代自動車をめぐる駆け引き
ゴルゴ13では自動車業界の話が良く出てくる。本作以外では『アジ・ダハーカの羽』『ゼロ・エミッション 排ガスゼロ』『凋落した名車』などがある。本作の「タイガ」は「トヨタ」、「パッソーナ」は「パナソニック」、「藤山重工」は「スバル」だろう。
作中ではタイガとパッソーナは激しく対立し、パッソーナは藤山重工を抱き込んでタイガに対抗しようとしている。現実の世界では、スバルは2020年にトヨタの関係会社になってしまっているし、トヨタとパナソニックは2017年にEVでの協業を発表しているなど、作中とはかなり違った動きを見せている。しかし、実際には内部での対立もあるようで、なかなか思うようには進んでいないようだ。
会社の利益と日本の利益
本作では明らかな悪役というのは存在しない。タイガの及川とパッソーナの弧桐はお互いにゴルゴを利用するほどの対立ぶりだが、それぞれの会社のために尽くしており、どちらかが悪だとは断定できないだろう。ただ、二人の争いは日本の国益という面では大きなダメージだ。
ただでさえEVで日本は遅れているのに、及川は会社を去らざるを得なくなったし、弧桐もEV用につくった工場が全壊する始末で、まさに自滅である。下手にゴルゴを利用すると、本人たちが思ってもみないような展開になってしまう好事例だろう。現実の世界でも日本の企業が一致団結して海外企業と渡り合う、とはなかなかならないようだ。日本の自動車産業も終焉がいよいよ近いのだろうか。
漢・及川
そうはいっても、本作での一番の見どころは、漢・及川だろう。弧桐にしてやられた及川は、まさに最後の手段を使って独断でゴルゴを雇う。過去には『ヒューム卿最後の事件』など自分への生命保険を使って依頼した者もあったが、まさかこんな手を使うとは。
及川がとった行為は決して讃えられることはなく、死ぬまで犯罪者として蔑まれるだろう。しかし、及川に後悔はないようだ。最後まで会社への忠節を失わない姿は、まさに漢といえる。ところで弧桐はどうやってゴルゴを雇ったのだろう……。
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秋山 輝
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