この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第100巻収録。中国人民のカリスマ的存在・毛沢東。その肖像画は災難を遠ざけるお守りとして人民の間でブームを起こしていた。そこに目を付けた共産党保守派の重鎮・老は、大量の肖像画をばらまき、北京政府の権威を失墜させようとする。阻止したい中国共産党はゴルゴにある特殊な依頼を行うが……。脚本:ながいみちのり
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中国が舞台となる作品が増加
ゴルゴシリーズの連載が始まったのは1968年。東西冷戦下にあったためか、中国が舞台となったり、中国政府や中国系の企業が絡んだ話は少なかった。例えば『チャイナ・タウン』ではアメリカが舞台となっている。
中国が絡んだテーマが増えてきたのは1980年代後半くらいからで、1990年以降になると頻繁に登場している。本作が描かれたのは1992年。政治にしろ経済にしろ、中国の存在が大きくなりつつある時期だ。
タイトルは唐代の歴史家である沈既済(しんきさい)の著作『枕中記』に由来。人生や世の中の栄光盛衰ははかないとの意味だ。
ターゲットは毛沢東の肖像画
ゴルゴシリーズでは人間だけでなくいろんな物がターゲットになることがある。そこでは物の破壊が目的となる場合と、物を破壊することで関係者の意思をくじくことが依頼となる場合がある。
前者は『星条旗を撃つ』での投票カードが、後者は『饒舌なコイン』での五円硬貨がある。また『死闘ダイヤ・カット・ダイヤ』では巨大なダイヤモンドを狙撃することで持ち主の野望を無くさせるという両方の目的を達成している。本作のターゲットは毛沢東の肖像画だ。と言っても、特に高価なものではなくやはり持ち主の意思をくじくことが目的だ。
ゴルゴにとってのジョークとは
本作で注目したいのはゴルゴと依頼人とのやり取りだ。高官からターゲットとして毛沢東の肖像画を示されたゴルゴは、「ジョークは時と場所を選ぶ事だ」と告げる。
しかし高官は、「この三十年間私は“冗談”を言った事がないよ」と返している。ゴルゴが“ジョーク”と考えたのはなぜだろうか。結果的にゴルゴの狙撃は成功し、持ち主の野望は打ち砕かれる。
つまり依頼人の中国高官はそこまで読んでゴルゴに依頼したことになる。いつもは鋭いゴルゴの洞察力も今回ばかりは届かなかった。それゆえにゴルゴは“ジョーク”と思ったのかもしれない。
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研 修治
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