この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第151巻収録。テロ組織「バグダリア」の壊滅を工作するCIAは、バグダリアの秘密資金を管理する重要人物・ラジェの暗殺を計画する。ラジェを暗殺すべく現地に向かったゴルゴだが、ラジェの屋敷は狙撃者の空間把握能力を狂わせるトリック・アートが施されており、正確に狙撃することは至難の業であった……。脚本:志庵暮
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視力が良いほど騙される強敵あらわる
今作は、視力に優れ、事物を正確に見られる人間を錯覚させるというトリックが主題である。きのこや山菜を探す名人は、保護色になっているような状態を見事に見分けて収穫していく。彼らの視神経は経験により鍛えられているのだが、それだけに人工的な錯覚には弱いかもしれない。
マニアックだが興味を引く内容であり「視る」という知覚が、いかに多くの情報を基に形成されているかがよくわかる。ラストで、ゴルゴがサングラスの表面をライターで炙る理由は近視や乱視などの効果を応用したもので、その逆転の発想に思わず感嘆の声をあげた。
罪のないアートとして楽しめるだまし絵
だまし絵・トリックアートは、エッシャーの絵が有名であるが、その他、アルチンボルドが果物や野菜で人の顔を形作っている絵や、日本では安野光雅の絵本が楽しい。「見る」という知覚は、眼内レンズに映った像を視神経で解析して映し出す行為である。
こういう絵を描ける人は脳内に特殊な視神経を持っているのではないかと思われる。ホリエのように危ないことに利用するのではなく、マンションやアパートの壁、工事中の塀にお城やお屋敷の広間の絵を描くか、そんな壁紙でも貼ってあれば、なかなかくつろげる空間になるのではないだろうか。
あっと驚くゴルゴの発想
ホリエが使ったのはきわめて精巧なトリックであり、冒頭の場面やゴルゴを欺こうとする橋のデザインなど、合法的でありながら、武器にも匹敵する効果的な策であり、もし現実にテロリスト等に応用されたら、と思うと背筋が寒くなる。それを「目があざむくのなら」と考えて発想したゴルゴのシンプルな作戦には、まさに目からウロコが落ちる思いだ。
「錯覚」というウロコを自ら落としたゴルゴには脱帽である。最後にサングラスを投げ捨てる場面は、膨大な時間と多額の費用をかけたホリエの策がサングラス一つに敗れ去ったことを象徴している。
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野原 圭
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