この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第172巻収録。大統領派と首相派が対立を深めるウクライナ議会。事態を打開すべく総選挙が行われようとした矢先、大統領と首相の狙撃未遂事件が発生。MI6の元アナリスト、ダグは、事件の裏に「G」という謎の組織が関与しているとの情報を掴み、独自に調査を開始する。脚本:加久時丸
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いつまで繰り返されるウクライナの悲劇
ダグの言うとおり、島国に住む日本人は他国と国境を接するという緊張感は理解できない。敗戦後アメリカに占領されるまで、他国から侵略を受けたのは鎌倉時代、中国大陸からの「元冠」くらいで、台風といういわば気象・地政学上の幸運によって助けられた。
ウクライナは逆にその地理的要因によって、歴史上翻弄され続けてきた国である。ポーランド、ソ連、ドイツによる支配から、ようやく独立国となった後も、様々な圧力を受け続けている。今回の見所はキーワード「G」の意味がすべてであり、歴史の暗闇に光をあてた秀作となっている。
あのMI6がなんと新聞広告で求人
もしも就職情報誌に「あなたも君も007になれる。危険手当も充実」などという広告で諜報員を募集していたらあなたはどうするだろうか。MI6が新聞広告で求人していたことは世間を驚かせたが、きつい、汚い、危険の3Kブラック職業だから人材難も理解できる。
もちろんジェレミーは諜報員として採用されたのではない。諜報員登用への最初のテストは、突然訪問したマンションのベランダで水を飲ませてもらえるか、など機転がきくかどうかという点らしい。そういう意味では、口先八丁の詐欺の才能がある人物が適材ではないかと思われる。
若い頃のちょいワル・不良のススメ
だいぶ前だが「ちょいワルオヤジ」という言葉が流行った。オヤジ様たちは猫も杓子もお約束のハンチングにTシャツのイタリア風スタイルをしていたことがある。ちょいワルとはこういう生真面目ではなく、思考や行動に指1本分の遊び心のある人ではなかろうか。
ダグが道を踏み外してしまったのは、このゆとりを欠いていたからだろう。ゴルゴを詳細にアナライズすれば依頼を拒否した理由を理解できた後悔からさらに落ち込んでいく。優秀で真面目な人物ほど一度折れると立ち直るのが難しい。通販の文句ではないが「挫折や寄り道はお早めに」。
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野原 圭
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