この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第74巻収録。南太平洋大学の副理事長・カセンガドの暗殺を請け負ったゴルゴ。一方のガセンガドも、任務成功率100%を誇るボディガードチーム「ホリーズ・ガード」を雇い迎え撃つ。任務成功率100%同士の対決。究極の盾矛対決のゆくえは? 日付変更線を利用したゴルゴの頭脳プレーが光る一編。
スポンサーリンク
敵との正面対決より安全策を取るゴルゴ
標的を日付変更線の前日側に誘い出し、油断させた上で始末するという頭脳プレイを披露するゴルゴ。標的を護衛しているのは、精鋭とはいえ民間のボディーガード部隊に過ぎず、ゴルゴなら正面からでも十分殲滅できる相手だろうにと疑問に感じる読者も多いかも知れない。
しかし、そこが単なる戦闘狂とは異なる、プロのプロたるゆえんである。必要とあらば軍人やゲリラの大部隊とでも戦ってみせるゴルゴだが、無用な戦闘を望んでいるわけではない。他に安全に標的を始末する策があるならそちらを選択するという、クレバーな考え方がうかがえる一幕だ。
対決の機会を逃した名ボディガード
ゴルゴと対峙する機会には恵まれなかったものの、標的の護衛役であるボディーガード集団・ホリーズのチーフ、モリスもなかなか骨のある人物だ。自信家ではあるが、ゴルゴを侮ったりはせず、冷静にその行動を分析して対策を練っている。
ゴルゴに関する情報もかなり詳細に収集していたようで、不発弾による任務失敗の顛末(『アクシデンタル』)までも把握しているのは流石の一言。作中ではゴルゴにまんまと出し抜かれる結末になってしまったが、個人的にはぜひゴルゴとの交戦が見たかった人物である(そうなったら彼の命はなかっただろうが……)。
運命が二転三転した「地上の楽園」たち
作中の台詞にもあるように、本話の舞台であるフィジー共和国は、本話発表の前年である1987年にクーデターで新政権が樹立され、英国連邦を脱退。だが1997年には憲法を改正し、再び英国連邦に加盟している。
また、本話の終盤でカセンガドが逃亡先に選んでいるナウルは、リン鉱石の輸出で栄えた小さな島国で、本話当時はきわめて高い生活水準を誇っていた。1990年代後半からはリン鉱石の枯渇で経済破綻しており、154巻収録の『サンクチュアリ』では「ナウトロ共和国」と名を変えて、ゴルゴの活躍の舞台ともなっている。
この作品が読める書籍はこちら
東郷 嘉博
最新記事 by 東郷 嘉博 (全て見る)
- ゴルゴ13:第536話『神の鉄槌』のみどころ - 2024年9月19日
- ゴルゴ13:第552話『受難の帰日』のみどころ - 2024年9月19日
- ゴルゴ13:第535話『森と湖の国の銃』のみどころ - 2024年9月19日