この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第69巻収録。車を運転中の女性が狙撃され死亡した。捜査の結果、犯人は長距離射撃で走行中の運転者を狙撃したことが判明。情報屋が女性の夫に殺し屋の情報を与えていたこと、偶然にもゴルゴがロスに滞在していたことなどの状況証拠から、警察はゴルゴの犯行とみて逮捕に踏み切るが……。脚本:本田一景
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ゴルゴに罪を着せる弾道偽装トリック
刑事がゴルゴに目をつける話は数多くあるが、本話は本当にゴルゴが無実という珍しいパターン。狙撃を彼の仕業と信じて疑わない警部に対し、「どうしても俺が殺ったことにしたいのか……」という呆れたようなゴルゴの台詞が面白い。
第三者がゴルゴに罪を着せる話といえば、38巻収録の『タンブル・ウイード』などが思い出されるが、本話はそれよりずっと手が込んでいる。狙撃の弾道を偽装し、素人には不可能な犯行に見せかけるというのは、なかなかに感心させられるトリックだ。しかし、案の定、ゴルゴを利用した者の命があるはずもなかった……。
極度のドケチぶりが招いた身の破滅
本話の真犯人である社長のケッタリングは、とにかくケチな人物。社員がトイレの電気を点けっぱなしにしていただけで怒るなど、その吝嗇ぶりは作中でも度々強調されている。そんな彼がゴルゴに罪を着せてタダで妻を始末するという展開は、実に筋が通っており、警部も「あのケチらしい考え」と納得しているほど。
そもそも今回の殺人自体、離婚調停中の妻に慰謝料を払いたくないという動機だったことが作中でも示唆されている。だが結局、金を惜しんで策を巡らせたばかりにゴルゴの報復を受けることになったのだから、因果応報と言うほかない。
テーマをストレートに表す直球タイトル
『弾道』というそのものズバリのタイトルが付けられている本話。漢字2文字だけからなるタイトルには、15巻収録の『残光』、34巻収録の『殲滅』、39巻収録の『飛翔』などがあり、いずれも印象深いエピソードだ。『ゴルゴ13』では、タイトルの意図するところを終盤まで読者に悟らせないという趣向がなされる回もあり、例えば『飛翔』はそうした名題の一つ。
対して本話の『弾道』は短編のテーマそのものを表している直球タイトル。直球から変化球まで多種多様なタイトルの妙が楽しめるのも、長期連載である『ゴルゴ』の魅力の一つだろう。
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東郷 嘉博
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