この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第24巻収録。幕府御用の箔座の元締め・後藤九郎兵衛が惨殺され、金の延板五百貫が強奪される。現場には未完成の襖絵があり、事件のあった日は幕府御抱えの絵師・住吉宗仙が出入りしていた。火盗改方お抱えの絵師・石田竹仙に協力を仰いだ平蔵は、六年前に発生した金座役人の不正に辿りつく……。
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やはり金は価値が高い
金箔を扱う大店が兇賊に襲われる事件が発生する。盗賊による事件は火盗改メと奉行所が共に協力して捜査を進めるはずだが、月番は北町奉行所か。北町奉行所と鬼平率いる火盗改メとの仲の悪さがしっかりと描かれているぞ。そして南町奉行所と火盗改メとの仲が対比的に描かれていて非常に分かり易いではないか。
鬼平の鋭い眼力は、捜査の道筋を書きかけの絵に見出したのだ。江戸時代のお金にまつわるエピソード、絵にまつわるエピソード、そして男女の恋愛エピソードと、これでもかというほどに内容の詰まった作品だ。生き残りの女中と見習い絵師との関係は。そして兇賊の姿は一体どこに。
お金を作って管理する組織
金箔は地金(インゴット)から作るもので、どうやら金箔師が打ち出していたようだ。金はもちろん通貨を作る材料ともなっていた訳で、そこを狙ったものだろう。さて、江戸時代はお金として金貨、銀貨、銭貨の3つを使っていたぞ。そのお金を作る場所や組織の名前が金座、銀座、銭座という訳だな。
江戸以外にも金座や銀座、銭座はあったのだが、徐々に規模が小さくなって廃止されて行ったのだ。しかし地名として名残が残っているところもあるぞ。要はそうした素材を扱う組織があったという事だ。余談だが江戸時代には銅座や鉄座、真鍮座といった金属だけではなく、人参座なんてのもあったそうな。
若い男女の罪悪感
若い男女が恋仲に至る事はごくごく普通の話だと思う。勘違いをする事は誰にでもあるだろう。しかし何気のない勘違いから、これほどの大惨事を引き起こしてしまったならば……。凶悪な兄の存在も、勘違いで兇賊を引き入れてしまった事も、全てを自分達の責任と考えたのだろうか。
鬼平の言うとおり仕方の無い事だと思うのだ。それでも彼らが進んだ道は、あまりにも悲しい花が咲いていた訳だな。少しばかり心が痛むストーリーではあった。しかし若い男女の過ちごときを厭わない、そんな腹の太い社会を願うものだ。
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滝田 莞爾
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