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簡単なあらすじ
ワイド版第54巻収録。前話で捕縛された”小浜の十兵衛”の子分・伝五郎が、頭を売った夜兎の角右衛門を探し出そうと躍起になっていた。角右衛門と親交のある乞食・きのじから情報を聞き出し、角右衛門に迫る伝五郎。密偵・角右衛門がこの回で命をおとす。
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筋金入りの本格、夜兎の角右衛門
長谷川平蔵が抱える密偵は元盗賊素性の者が多いのだが、その中でもとりわけ渋い密偵として角右衛門を推す鬼平ファンも多い事だろう。角右衛門の掲げた本格派盗賊の白波看板は、鬼平ファンの間では盗賊の矜持と言われるほどに高潔と評されるのだ。
非常に人気の高い、角右衛門エピソード連作の完結編ともいえる本作は絶対に目が離せないぞ。角右衛門のエピソードが気になる方は、先に『白波看板』『夜兎三代目』の2作を読む事で更に楽しさが増すかもしれないな。
角右衛門に関して言うと、時代劇ドラマでも単発物として取り上げられた事もある。“鬼平外伝 夜兎の角右衛門”のタイトルでドラマ化もしているので、この事から見ても非常に人気の高い登場人物であると分かるのだ。
おこも、とは
角右衛門が火盗改メに出頭をして密偵となった訳だが、その理由は乞食との出会いによって看板に傷が付いたと知ったが為だ。このストーリーは先般紹介した『白波看板』に詳しく載っているぞ。つまり看板とはその人が持つプライドであったり、誇りと解釈すると分かり易い。
どのような身分、立場であろうとも絶対に傷を付けてはならない誇りがあるからこそ、人は生きる事が出来るのかもしれないな。本作では乞食(おこも)という呼び名をしている。意味としては正しいのだが、言葉の由来は少し異なる事を述べておこう。おこもとは薦(こも)被(かぶ)りの略で、端的に言ってしまえば藁などで編んだ敷物を手にする事に由来する。
元々は“コモ”という植物で編んだ物を示したのだが、後に他の植物で編んだ物も名前が同一化したと言われているのだ。近年では害虫駆除の為、藁編みを巻いている木を見かける事があるだろうか。あの方法を、こも巻きと言う。現代の言葉にも江戸の文化が残っていると考えると、何やら言葉を知る事は楽しいとは思わないかな。
角右衛門の生き様
本格盗賊の頭として夜兎一味を捨て、家族を捨て、そして密偵となった角右衛門。矜持を保つ為とは言えども、その代償は大きかったのだろう。誰に伝えても角右衛門の苦悩は伝わらなかったのかもしれない。
火盗改メの狗と揶揄され、盗賊を密告する事でしか生きる事が出来なかった辛さは想像に難くないな。ドラマ版や小説版ともまた違うコミック版での完結は、鬼平ファンならば是非おさえておきたい作品だ。角右衛門の矜持を見届けるのだ。
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滝田 莞爾
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