この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第160巻収録。姿を消せる光学迷彩戦闘服に身を包んだイスラエルの「カメレオン部隊」。隊長のレイスマンは部隊を私物化している。作戦立案も行動も事後報告という彼の暴走ぶりに手を焼いた軍部は、ゴルゴに部隊の殲滅を依頼する。魔法のスーツに対しゴルゴは原始的な方法で活路を見い出す……。脚本:広幡江介
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テクノロジーを駆使した見えない敵との戦い
戦争はより高度なテクノロジーを発達させる。高性能小型カメラとELディスプレイの技術を組み合わせた光学迷彩戦闘服、カメレオン・スーツという、透明人間になれる恐るべき武器が現れた。敵の姿が見えなければ攻撃も防御も難しい。
ゴルゴはあえてスレイマンに情報を流し、彼の亡妻が眠る墓地を対決の場所と決める。「曇り空とはツイている。天国から助けてくれるつもりか、エステール」とつぶやくスレイマン。彼も愛妻エステールを爆弾テロで失わなければこれほど冷徹な人物にはならなかったかもしれない。戦争からは憎悪しか生まれない。

文民統制が必要な理由
スレイマンは軍人であり、最終目標は戦争の勝利にある。部下の生命を預かり、時に犠牲にしなければならない立場の人間としては当然の感情といえるが、政治家は違う。かつて朝鮮戦争の際、米韓側が北朝鮮に対して優勢になったとき米軍司令官マッカーサーは進軍続行を主張した。
しかし、実際に中国国境まで攻め込めば、中国・ソ連と全面戦争になると判断したトルーマン大統領はマッカーサーを解任し、現在も南北38度線で停戦している。軍人からみれば中途半端で納得できない結果だろうが、現実の世界は微妙なさじ加減が必要なのだろう。
カメレオンスーツは生き延びたのか
どんな武器にも弱点はある。夜間の戦闘で照明弾を使い、目くらましの効果とともに影をあぶりだした。スレイマンはカメレオンスーツのデータ破棄をハイラルに命じるが、ハイラル自身はゴルゴのミッションの対象外なので、生き延びていることになる。
『アム・シャラーの砲身』の村井のように、倫理をもたず、自分の欲求だけを追求する研究者というのは、目標達成のためには手段を選ばない。もしかしたらハイラルは、ロシアに渡って、研究を続け、その研究をを引き継いだ結果が『地図無き悪霊の森』のような結果を招いたのかもしれない。

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野原 圭

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