この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第182巻収録。テロ集団がウィルス兵器を開発。このウィルスを投与した女性をニューヨークに送り込みパンデミックを起こすのが狙いだった。しかし女性はニューヨーク行きの旅客機の中で発症してしまい、機内はパニックとなる……。
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身を挺して世界を守ったリナット
平凡な女子大学生であったが、身を挺して世界をパンデミックから守ったリナットの切ない悲劇的エピソードである。絶望の淵に立たされて、なお、天然痘テロの蔓延を防いだリナットの勇気を素直に称賛したい。一方で、リナットの恋人であるサーイブの心理について理解しがたい読後感は拭えない。
殉教者として天国へ行く栄誉を奪われてしまったこともあろうが、リナットを守るよりも教義を優先したというところか。サーイブはリナットの侠気の足元にも及ばない。結局テロが失敗に終わってしまい、その後のサーイブたちの様子は物語られない。
歴代最凶の生物兵器
21世紀に入ってから生物兵器(バイオテロ)を主題にしたエピソードが増えている。『万能ベクター・VOGUE』のO-157、『マイクロテロリスト』のニパウィスル、『AZ4 CP72』(※21世紀のエピソードではない)と『赤い五月の使命』では炭疽菌が登場している。
『万能ベクター・VOGUE』については、遺伝子改変した微生物を使用するということでスケールは大きいが実用化途中(航空機内で発症させることには成功)で計画が頓挫した。今エピソードの天然痘変異ウィルスは、発症者から感染すれば1、2時間で発症することになっており、歴代では間違いなく最凶の生物兵器である。
宇宙空間に次ぐ高度での難狙撃
過去に『一射一生』で宇宙空間での狙撃を担ったゴルゴが、高度1万メートルでの仕事を果たす(後に『流星雨の彼方で』でも宇宙空間狙撃)。
超高度とはいえ、宇宙での狙撃に比べると易しくなるかと錯覚する。が、『一射一生』にはなかった要素として、気圧、風速、弾丸の直進性などの勘案が必要だ。
依頼の打ち合わせでこのあたりの要素をすらすら列挙するゴルゴは、当たり前ながらさすがである。しかも、狙撃対象が秒速250メートルの移動体であり、その中のコックピット内の小さなレバースイッチであることから、“狙撃”ということに関しては間違いなく『一射一生』以上の難度といえるだろう。
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片山 恵右
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