この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第23巻収録。ソ連の占領下時代のハンガリー。ソ連は弾圧と殺戮を繰り返し、悪虐のかぎりをつくしていた。ハンガリー自由解放同盟は抵抗むなしく虐殺されたが、それは内部スパイの裏切りが原因だった。十数年後、その裏切り者・イレーナの所在を突き止めた自由解放同盟の生き残りは、ゴルゴにイレーナの抹殺を依頼する。脚本:岩沢克
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ハンガリーが東側だった時代
1989年に共産主義体制から民主共和制となったハンガリー。1956年、共産政権下でソ連に国民が反発したハンガリー動乱の復讐がゴルゴに依頼される。
東西に挟まれたハンガリーは1974年発表の本作を始め、『色あせた紋章』(1969年)、『ザ・メッセンジャー』(1983年)など度々舞台となった。しかし比較的すんなり民主化したこともあり最近の登場は減っている。ただし『Gの遺伝子』(2016年)に登場したヒロインのファネット・ゴベールがハンガリー人であるのは忘れないでおきたい。果たして彼女はゴルゴの娘なのだろうか。
意図しない三つ巴の戦い
タイトルの「折れた矢(ブロークン・アロー)」はアメリカ軍における核兵器事故を意味する暗号だ。北極圏の事故で見失った水爆を巡ってCIAとKGBが対立することから物語が発展する。ここで注目したいのはゴルゴの依頼と水爆とは直接関係していない点。
もしCIAかKGBが様子見に徹していたら、いずれもゴルゴとの対決は避けられたはずで、CIA職員1人を残して全滅することもなかっただろう。もっともCIAとKGBが対決したらどちらが勝つかは不明だが。つまりゴルゴにしてみれば降りかかった火の粉を払っただけに過ぎない。
生き残りを1人作った理由
水爆の情報を得るためゴルゴを敵に回したCIAとKGB。敵には容赦しないゴルゴであれば全滅間違いなしだろう。しかしKGBこそ責任者のソコロフ大佐を含めて皆殺しにしたものの、CIAはリーダーのニューマン主任を見逃している。
「なぜだ!?」といぶかしむニューマンにゴルゴは、「この出来事はCIAと、KGBとの情報活動によるもの」と報告するよう伝える。つまりゴルゴ自身を含めた情報隠蔽のためだ。ではゴルゴは水爆紛失の事故を知っていたのだろうか。それとも知らないまま一番収まりのつく選択をしたのだろうか。
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研 修治
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