この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第7巻に収録。盗賊・網切の甚五郎が鬼平殺しを計画。甚五郎の策略にはまり、危機的状況に立たされる平蔵。そんな平蔵を助けたのは、居酒屋のおやじで老泥棒の九平だった……。『兇剣』『血闘』につぐ、平蔵の絶体絶命エピソード。
スポンサーリンク
倶利伽羅峠の地蔵堂
老盗の九平が雨宿りをしたのが峠の地蔵堂。そこに偶然居合わせたのが三人組の男どもで、どうやら網切の甚五郎一味という事を知った九平だ。ひとりばたらきの九平でも網切の甚五郎の名は知っているほどの兇賊であり、更に甚五郎が殺害を目論んでいるのは鬼の平蔵ともあれば、盗賊ならば必ずや知っている名なのだ。
居酒屋のおやじをしている九平が、盗賊界の有名人と取締り側の有名人二人の名前を耳にした事で、近々その対立が起こるであろう事は容易に推測出来た訳だな。甚五郎の鬼平殺害計画とはいかに。鬼平は凶賊どもを叩きのめす事が出来るのか。どことなく恨めないおやじとして描かれる九平を中心に進んで行くストーリーは必見だ。
猿叫(えんきょう)
おまさと平蔵が九平の営む居酒屋にて芋酒を堪能した帰り道、“きええーーっ!!”という掛け声と共に襲われたのだが、作中でこの部分は声だけで、姿の描写はされていないな。この掛け声から色々と推測をしてみよう。時代小説などで剣客が発する、「チェストー!」という掛け声があるが実際に耳にしてみると、「きええーっ!」と聞こえるそうだ。この掛け声の事を、まるで猿が絶叫している形容から猿叫と呼ぶのだ。
そしてこの独特の掛け声は、薬丸自顕流という流派に代表される猿声と考える事も出来るだろう。となれば描写がされていない剣客の初撃は、抜即斬の如く繰り広げられた一撃必殺の攻撃だったかもしれない。その初太刀を受け切った鬼平の強さを改めて知る事となったな。一撃必殺の剣法が初撃にて仕損じたのだ。こうなれば鬼平の修めた一刀流の前には、成す術もなかろうか。
鬼平の強い精神力
網切の甚五郎の狡猾な策略に嵌ってしまった鬼平、太刀を持たぬ状態にて絶体絶命の状況になろうとも絶対に諦めない心の強さが光ったな。持つ武器は小刀と悪を許さぬ精神力。小刀一本にて兇賊どもを次々と骸へと化していく姿はまさに鬼の平蔵だろう。鬼平の持つ備前兼光は、何人の兇賊を斬ろうとも、決して脂が巻く事はなかったのだ。ともあれ多勢に無勢、窮地に追い込まれた鬼平ではあったが、九平の自白を基に救援へと駆けつけ佐嶋らによって兇賊どもの罠を脱する事となった。
兇賊の頭、網切の甚五郎を逃がす事になってしまった鬼平だが、外道どもを地獄の果てまで追い詰めるだろう。その言葉通り、峠の地蔵堂で甚五郎を取り囲んだ鬼平であったのだ。甚五郎の末路も気になるが、九平への処罰も気に掛かる所だな。どのような結末を迎えるのかが非常に気になる大作に仕上がっている作品だ。ぜひともお勧めしたい作品だぞ。
この作品が読める書籍はこちら
滝田 莞爾
最新記事 by 滝田 莞爾 (全て見る)
- 鬼平犯科帳 漫画:第265話『同門の宴』のみどころ - 2022年9月9日
- 鬼平犯科帳 漫画:第48話『おしま金三郎』のみどころ - 2022年9月5日
- 鬼平犯科帳 漫画:第67話『殺しの波紋』のみどころ - 2022年9月1日