この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第111巻収録。5人の女性の白骨死体が発見された。異常犯罪者の連続殺人事件として捜査を始めたFBIのワトソンは、実母殺しの罪で服役中のマーカス・モンゴメリーを容疑者として捜査を進める。その過程で判明したのは、モンゴメリーには世界中から手紙が届き、直後に必ずラジオに“讃美歌13番”をリクエストしていることだった……。脚本:国分康一
魅せられてはいけないと知っていたのに
ゴルゴ13ファンなら周知の事実だが、ゴルゴの刊行ペースは他の漫画とは少し異なっているため、雑誌の掲載順でコミックスになるというわけではない。さらにエピソードごとに話が完結しているので、ストーリー漫画と違ってどこから読んでも問題は無い。この『マークのリクエスト』を初めて私が読んだとき、たまたまではあるがゴルゴに興味を持って深入りしたがためにターゲットになったようなエピソードをまとめて読んでいた。
そのなかでも、最も切ないと感じたのが今回狙撃されたワトソンだ。プロファイリングで全米一と言われ、異常犯罪者へ興味を持ちすぎると取り返しがつかないことになると分かっていたはずなのに、ゴルゴを追うことを止められなかった。
モンゴメリーという不思議な存在
ワトソンはゴルゴ13をデータとして知っただけならここまでのめり込むことはなかっただろう。モンゴメリーという一見愚鈍に見える、孤独な異常犯罪者という存在がキーになった。このモンゴメリーはこのエピソードの前にも何度か登場しているが、過去が明かされたのは初めてだった。
モンゴメリーは彼本人が何を語るわけではなく、起こした犯罪も同情の余地があるものではない。だが不思議に親しみと深い興味が湧くのは判る。さいとう氏はモンゴメリーに感情移入できた、彼はある種の愛おしさがある脇役だと語っている。そのような心境で描かれたモンゴメリーだから読んでいて愛着が湧くのだろう。
ゴルゴがモンゴメリーの神となった理由は
モンゴメリーは殺人への衝動を抑えきれない自分を誰かに止めて欲しいと血でメッセージを残す。それを見たゴルゴがモンゴメリーに何らかの方法でコンタクトを取り、モンゴメリーの理解者、そしてゴルゴと依頼者の仲介人となった。ゴルゴとモンゴメリーのファーストコンタクトは作中では描かれなかったが、モンゴメリーにとってゴルゴは初めての理解者だったのは間違いない。
しかしどうしても不思議なのは、ゴルゴはモンゴメリーとは違って冷静で理性的に殺人を行うのに、なぜモンゴメリーの理解者たりえたのかというところだ。ゴルゴは何を語ったのか、あるいは再会の時と同じく何も語らなかったのか。ふたりの邂逅と、モンゴメリーの神になった瞬間を見たかった。
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大科 友美
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