この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第24巻収録。密偵の仁三郎が、嘗役”間取りの万三”と再会。万三は本格の盗賊にしか間取り図を売らない男。しかし愛する女・おさよに金を残してやりたい一心で、兇賊・鈴鹿の弥平次一味に売ることを考える。万三に好意を持つ仁三郎は平蔵に相談し、万三を救おうとするが……。
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盗みに必要な事前の準備
ひと口に“押し込み強盗”と言っても、無理やり戸口を押し破って……のような手口はほとんどない。現代以上に静かな江戸の夜では、ちょっとした物音でも大騒ぎになってしまうだろう。
そうした意味で、盗みに入る家の下調べをする嘗役(なめやく)や侵入に必要な仕かけを施す大工などの存在は欠かせない。
本作では嘗役の仁三郎と大工の万三が絶妙のやり取りを見せている。ただし両人が全面的に盗賊に加担しているのではなく、既に平蔵の手下となっている仁三郎が仕事(強盗)の匂いをかぎ取ったところに面白い駆け引きが生じている。
馬蕗の利平冶つながりの二人
熟練の嘗役であり『熱海みやげの宝物』『妙義の團右衛門』などにも登場する馬蕗の利平冶。利平冶の最後を知っている仁三郎と、知らないままにつなぎを付けてもらおうとする万三との会話は興味深い。利平冶の最後を、「人伝に噂で聞いた事ですから……それ以上のことは」と言葉をにごさざるを得なかった仁三郎の心境はどれほどのものか。
その後に再び描かれている利平冶の最後は悲惨の一言だ。盗人の片棒を担いだ悪党の最後にふさわしいと言ってしまえばそれまでだが、平蔵の手下として働き続けることができたらどれだけ手柄を立てただろうか。
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病気になると元気になる?
本作で気になるのは万三の言葉だ。労咳(現代の結核)にかかっている万三は、「労咳というのはふしぎな病でよ……熱が出ると、妙に女が欲しくなる」と言って、同居しているおさよとイイコトをする。それも毎夜毎夜、って病気だよね。
現代では治療方法も確立されている結核だが当時は死の病だった。「男性は死の危機を感じると性欲が高まる」と言われるが、万三もそうなのだろうか。
事件の後、平蔵達に見逃されて江戸を離れた万三のその後は『おみね徳次郎』で描かれている。あえて書けば利平冶と同じように不幸な最期だった。これも盗人の運命なのだろうか。
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研 修治
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