この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第22巻に収録。平蔵は愛刀を研ぎに出した帰り、息子の敵・山下藤四郎を討たんとする老人・市口瀬兵衛に出会う。長旅で衰弱した様子の瀬兵衛に、平蔵は助太刀を約束する。レアな登場人物”逆でこの仙次郎”が平蔵のお役目に貢献。笹やのお熊婆さんも大奮闘する、胸がスカッとする一編。
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旗本の懐は寂しくもあり
鬼平犯科帳では非常に珍しく、火盗改メの任務が一切絡まないのだ。長谷川平蔵が一人の幕臣として、一人の男として正義を突き通す爽快ストーリーだぞ。江戸時代の武士階級の辛さも描写されていて読み応えばっちりだ。
年の瀬ともなれば御家人や旗本の懐も不如意となる訳で。ひょんな事から爺さんの息子の敵討ちを助太刀する事となった鬼平。正式な敵討ちではないため秘密裡に動かねばならぬのだが、そこで鬼平の人脈や行動力が光るのだ。我らが鬼平、幕府に潜む悪を打ち倒す事が出来るのか。
男性と男性の夜の関係
爺さんの息子は高利貸しの海坊主に殺害されたのだが、海坊主による一方的な恋心のこじれが原因のようだ。確かに男色が強く出る男性もいたようだが、実は男性が男性と関係を持つ事は特に珍しくもなかったのが江戸時代だと言われているぞ。
江戸時代には“色道”を極めるという考えがあって、女色を知り、男色を知ってこそ色道が成立するとされたのだ。作中のように小姓を抱える者もいれば、陰間茶屋で男性を買う者もいたそうで、その形は様々だったようだな。市民同士で酒を酌み交わして床入りなんて事も多かったらしいのだが、こちらはあまり資料が残っておらず残念だ。
情け容赦ない鬼平の仕置き
鬼平犯科帳は、正義と悪の中に入り混じった複雑な感情を物語に仕立てるのが特徴の一つだろう。ところが本作では情け容赦ない鬼平の処断によって、悪者に一切の弁解の余地すら残さず殲滅させる衝撃が走った。まさに鬼平版“勧善懲悪”物語と言っても過言ではないだろう。
悪者に全く感情移入すらさせないストーリー展開は、実に清々しく楽しいと感じたぞ。そして訪れる大きなカタルシス。毎回がこの展開では飽きてもしまうが、稀にこういった展開があるからこそ、鬼平犯科帳は人気があるのだろうな。是非ともお勧めしたい作品に仕上がっているぞ。
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滝田 莞爾
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