この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第53巻収録。小間物問屋・井筒屋徳兵衛は、元盗賊という過去がある。妻のおもんが、番頭の宗次郎と親しそうに話しているのを見て、おもんの浮気を疑う。一方、昔の盗賊仲間から徳兵衛の殺害計画があることを聞かされる。黒幕はなんと、妻のおもんだという……。
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色々な過去
人にはそれぞれ触れられたくない過去があるのは、誰でもそうだと思うのだ。もちろん本作に登場する徳兵衛もその一人で、過去には色々あったようだ。道端でばったり再開する徳兵衛と松蔵との間にも因縁があるとの事。
偶然が引き起こす人生の転換とも言えるだろう。女房のおもんも過去には何かがあったと思われる。しかし今を生きる上で、過去にとらわれては前に進めない事もまた事実だろう。本作は前へと進むために各々が悩み、奮闘するストーリーとなっている。人の心理が非常に分かり易く描かれている作品に仕上がっているぞ。
江戸時代の不倫
男女の間柄とは、江戸時代にも複雑な物だったのだ。当然、男と女であれば例えパートナーがいれども、そのような関係になる事もあるのが常だ。
現代では慰謝料請求など、お金で解決する話ではあるのだが、江戸時代ともなればそうともいかない。不倫の代償はお金ではなく、命の時代だったのだ。不倫をされた旦那は、その妻と間男を殺しても罪に問われなかったとされる。
さて本作のパターンはどうであろう。商家の内儀と使用人の不義密通が問題となっている。となると、なぜ駒吉は鬼平に逮捕されたのだろうか。過去の盗賊業の罪だろうか。謎は深まるばかりである。
妻を想う気持ち
徳兵衛は女房のおもんを心から愛してるのであろう。その描写が随所に見られる。更に、使用人との不義密通を疑うほどに情愛が深いのかもしれない。実際に不義密通はされていたのだが、元盗賊が妻を娶って生活しているストーリーは鬼平犯科帳にも多く登場する。
しかし本作の徳兵衛に関しては、女性に対しての感情が他の元盗賊と異なっているように思うのだ。非常に女性に対して素直な性格と見受けられる。
それが悪い事ではないのだが、元盗賊としての抜け目の無さと相容れない女性への愛着心は、比較的珍しいキャラ設定だと感じるぞ。どちらかと言えば終幕は悲しい話になってしまうが、元盗賊の一つの生き様として見届けたい方には楽しめる作品だと思うのだ。
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滝田 莞爾
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