この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第40巻収録。「今夜、盗賊が紙問屋・伊勢屋に押し込む」と書いた投げ文があった。投げ文に書いてあった内容にウソはなく、火盗改方が盗賊団を捕縛して一件落着したに見えたが……。首領の蝦夷の寅蔵が取り調べで自供した、引き込み役とはなんと……。
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同心、沢田小平治
猛者揃いの火盗改メにおいても、剣の腕前は鬼平を凌ぐとも言われる同心、沢田小平治が本作の主役だ。老母と二人暮らしの独身者ながらも、品行方正、剣術は小野派一刀流の免許皆伝、沢田は平蔵の信頼も非常に厚いぞ。
沢田が登場するストーリーは多くの場合で派手なアクションシーンが伴っているな。『剣客』『じゃんこ』などに代表される沢田小平治ストーリーはどれも見ごたえ抜群だ。本作も同心としての沢田の才覚がキリリと描かれており、沢田小平治ファンには堪らない作品だろう。
盗賊捕縛は順調に進むものの、押し込み先の家人を負傷させてしまう事からストーリーが展開していくぞ。盗賊に斬られて負傷した奉公人のおこうと沢田の関係はどのように進展していくのだろうか、その点も楽しみたい作品だ。
江戸時代の医学
斬られたおこうが井上立泉の下に運ばれ手術を受けるが、その際に滞留していた弟子の杉原という医師が蘭学の修行をしていた、といった説明がなされている。井上立泉が本道の医師であると自称しているように、現在でいう内科医を本道と呼んでいたのだ。
それ以外の科、例えば外科や歯科、鍼灸などを総称して雑科と呼ぶ区分けもあったそうだ。長崎の出島では主にオランダから伝わった医学、特に外科を中心とした医学が広がりを見せた。オランダ(阿蘭陀)の蘭から取って、これを蘭方医学と呼んだ訳だな。
対して中国(漢)から伝わった医学は漢方医学となるのだ。現代では東洋医学、西洋医学という区分が一般的かもしれない。しかしどちらが優れているという話ではなく、どちらの良い部分をも取り入れて医学が発展してきたのだな。
沢田とおこうの恋の行方は
手術の傷も癒えはじめ、沢田の毎日の見舞いに対しても嫌な素振りを見せないおこう。傍から見てもお似合いの二人だな。杉原医師の許可を得て二人で海岸へとデートに出かけ、遂に急展開かと思いきや、盗賊の残党どもに恋路を邪魔されてしまう沢田。
鬼平と共に残党を殲滅させるも、おこうが引き込みであった事を告げられた沢田の心中は複雑であっただろう。同心として引き込み女と添い遂げる事は出来ないと悟ったのか、そっと見送るしか出来ない沢田の姿には心が痛むのだ。こうして沢田の純愛は見事に散ったのだが、同心の厳しい世界をもまた垣間見た気もしたぞ。
沢田の食べようとした弁当を掻っ攫ったゆりかもめもまた、おこうと同じく北へと旅立っていくという切ない話だが、実に鬼平犯科帳らしいストーリーに纏まっているとも思えるのだ。
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滝田 莞爾
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