この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第54巻収録。“小浜の十兵衛”なる盗賊が芝居茶屋・岡崎を狙っている疑いがあり捜査に乗り出す平蔵。一味の男を尾行すると、“岡崎”に出入りする版木職人の順吉の家に入っていった。岡崎の娘・おくにと、版木職人の順吉は互いに惚れあう仲だったはずだが……。
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子を想う親の気持ち
親というのは有難いもので、いつだって子供である我々の事を最も気に掛けてくれるな。子の立場からすれば、もういい加減に社会的地位もあるんだし子供扱いしないでくれ、と言いたくなる状況すらある。
しかし生まれた瞬間から我々を見ている親としてみれば、例え何歳になろうとも子は子のままなのだろう。時として親が子の成長を案ずるが故に、子離れが上手く出来なかったり、子を低く評価してしまう事もある。
もちろん親の考えや性格にもよるのだが、親が子を想う気持ちはいつだって有難いものだな。様々な親があっても、どれが正しいかは分からない。親と子の間でトラブルが起こる場合もあるだろう。本作は子を慮る親心を描いた作品として見ると面白いぞ。
家柄による様々な気持ち
江戸時代では特に職業や肩書、家柄によるプライドが生活に大きな影響を与える時代だった。子供に対して家を守って欲しいという気持ちから、現代とはまた違った期待の形があったのだろう。
身分が高くとも貧しい暮らしをしていた旗本などもいて、時として商人に頭が上がらないという事もあったそうな。現代でも若干は意識として残っているとは思うが、当時は子供の結婚ともなると家柄や身分を重要視した訳だ。身分だけではなく特定の職業を下に見て小馬鹿にする家も多かったと聞くぞ。
もちろんそれが行き過ぎてしまえば職業差別に繋がる訳で、決して褒められた事ではないのだ。しかし当時はそこまで家という物に、大きな誇りを持っていたとも言えるだろう。命を賭した駆け落ちをするまでもなく結婚が許される現代に生まれた我々は幸せなのかもしれないな。
子供はたくましく育つ
親からすれば、どうしても幼い頃の守らなくてはならない対象として子供を見てしまうものだ。体は立派になっても、まだまだ子供の考えはどことなく危なげと思ってしまう。とはいうものの子供は子供なりに、社会に揉まれて強く育って行く事を忘れてはいけないだろう。
むしろ子供が外から学んできた事を、親の我々が教えてもらう姿勢だって重要かもな。負うた子に教わる事が出来れば、きっと親としても子としても、我々が成長する事に繋がるかもしれないぞ。
ハンデを負いながらも自らの人生を強く歩む子と、子の行く末を強く案ずる親との掛け合いを、鬼平犯科帳ワールドで魅せる作品に仕上がっている。江戸時代のお家背景も含めて、誰もがどことなく自分と重ねてしまうストーリーではないかな。
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滝田 莞爾
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