この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第50巻収録。吉原の花魁・初音が殺害された。初音は生前、蔵前の差札・大口屋に押し込みの計画があると話していたらしい。備前守からの命により捜査にあたった平蔵は、押し込み前に盗賊団を捕縛する。しかし、その直後に大口屋は別の盗賊に押し込まれる。先に捕縛した賊はおとりだった……。黒幕は一体、誰なのか?
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吉原の歴史
本作は江戸時代の遊郭として有名な吉原が舞台となっているぞ。多くの男性諸君は魅力に感じる街かと思うが、実は現存する吉原は元から遊郭のあった場所ではないのだ。
江戸時代初期には現在の日本橋人形町から日本橋富沢町のあたりに遊郭があったとされる。名前の由来は、この地域がヨシ(葦、アシの事)の生い茂った原っぱという事から吉原の名前が付いたわけだ。
日本橋にあった遊郭だが、江戸の拡大によって吉原を現在の浅草寺裏手に移転する事となった。これ以降それらを区別する為に日本橋の遊郭跡地を元吉原と呼び、浅草寺裏手の移転先を新吉原と呼ぶぞ。江戸時代から現代に至るまで、男性諸君の好奇心は旺盛なのだな。ただし火遊びもほどほどにしておかねばな。
鬼平犯科帳に登場する脇役
鬼平犯科帳を長らく読んでいるファンの方であれば、登場人物の顔形などの描写によってストーリーが推察出来る事もあるのだ。本作に登場する札差の旦那もどことなく小悪党のような表情をしている事から、初出の時点で何やらピンと来た方も多いかもしれないな。
多くの場合で、この手の顔をしている登場人物は性格が悪かったり、実は悪党だったり、もしくは痛い目に合うというのが相場だ。本作も御多分に漏れずこのケースに当てはまってしまうのだが、逆に分かり易い事が鬼平ファンには楽しめるポイントでもある。
ネタバレ要素を好まない人もいるやもしれないが、これはこれで鬼平の特徴ではなかろうか。札差の旦那はどのような痛い目に合うのだろうか。何やら不穏な顔の描写から予想をしていた人からすれば、心の中でスカっとカタルシスを感じるかもしれないな。
女の一念岩をも通す
年季を終えた吉原の遊女が主役のストーリーだが、本作を読み進めていくと、女性の思いの強さと信念のブレなさが感じ取れるのだ。目的を達成するが為には、例え好意を寄せている相手であろうとも容易に差す(裏切る)大胆さ、己に有利と見るや素早く乗り換えるフットワークの軽さ。
男性としては恐ろしさすら感じてしまう描写ではあるが、ことわざにもあるように女性の一念は、時として岩をも通すほどに強いものなのだろう。果たして千里がそれほどまでに他人を利用してまで達成したい目的とは何なのであろうか。そして今回利用された男たちの行く末とは。本作は女性の強さが描かれた作品となっているぞ。女性の怖さを垣間見たい方にもお勧めの作品だ。
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滝田 莞爾
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