この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第40巻収録。同心の佐久間が女に短刀で襲われる。女・八千代の目的は仇討ちで、人違いであったことが判明。八千代の決意に心をうたれた佐久間は、敵・石井弥十郎を探してやると約束する。一方、絹問屋・信州屋が集金の帰り道に襲われ、金を奪われた。目撃証言から犯人は石井弥十郎と割れたが、佐久間は平蔵には報告をしなかった……。
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剣豪、佐久間陽之進
市中見廻りをしている二人組は、例の如く忠吾と細川のコンビだ。見廻りの最中に同心の佐久間を見かけた二人は、持ち前の好奇心から後を着ける。そこで二人が目撃したのは、なんと堅物で有名な佐久間の不倫現場だったのだ。
そうであったら面白いという気持ちと、実際に現場を目撃してしまった後の気持ちの対比が面白いではないか。興奮を隠せない忠吾の表情と、えらいもんを見てしまったと焦る細川の表情は、上手く描かれてると思うぞ。
妻子ある佐久間の不倫が如何様にして始まったのか、そして何故二人は惹かれ合ったのかが紐解かれるストーリーだ。同心であると同時に、一人の男であるという事を意識しながら楽しんでほしい作品だぞ。
朴念仁の佐久間
細川が佐久間を案じて発した言葉に、“朴念仁”の佐久間さんが女に狂った。という表現が含まれていたな。朴念仁という言葉は歴とした日本語で、意味としては無口で頑固、わからずやで道理を弁えない、などと散々な悪口ともいえる意味なのだ。
男性のみに対して使う言葉で、女性の好意を察する事が出来ない鈍感男といった意味で使われる事もあるぞ。さて当の佐久間は、むしろ八千代に対して恋心を抱いているようにも見える訳で、決して女性からの好意に気づいていないとも思えないな。
となると、細川は先輩同心に対して相当酷い悪口を言っている事にならないだろうか。まぁ、細川らしいといえばらしいので、これは楽しい話題なのかもしれないな。
不倫関係の末に
八千代の仇である石井弥十郎を見事に討ち取った佐久間たち二人ではあったが、火盗改メ同心にあるまじき行為から独断にて取った行動は許されるべきものではなかったな。さすがの鬼平ですら佐久間に対しての厳罰に含みを持たせてはいたものの、一度燃え上がった男女の関係は鬼平より一枚上手だったという事だろうか。
同心としての身分だけでなく、妻子をも全てを捨てて八千代と共に生きる事を決めた佐久間だったが、いささか心配ではあるのだ。鬼平の言うとおり、女性は現在を生きたいと強く願うとあるが、今は佐久間と共に歩んだとしてもその気持ちが未来永劫続くとは限らないという意味にも取れるだろう。
仮にいつか八千代が佐久間に対して愛想をつかす瞬間が来たならば、朴念仁の佐久間はきっと仇討ちの思い出を説くのだろうな。その結果がどうなるかは悲しいかな、簡単に想像がついてしまう物だ。不倫という物はそれだけリスクの高い行為と言えるだろう。朴念仁もほどほどにしないと、全てを失いかねないので注意をして欲しいものだ。
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滝田 莞爾
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