この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第29巻収録。若い男を掴まえては手懐けている女を発見した、五郎蔵とおまさ。金遣いが荒いことから不審に思い尾行を開始する。女は、なんの目的で男を集めているのか……。女掏り師・鯉肝のお里が登場。仁三郎とおひさが恋仲になるシーンも必見。
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隻腕の魅力的な女性
上方訛りが特徴的な女性だが、どうやら右腕を持たないらしい。隻腕の女性が物売りの若い男性を囲い込んでいる、との話から進んで行くストーリーだ。江戸時代に女性が男性を買うという行為は特段珍しくもなかったのだが、多くは若い役者や陰間茶屋など特定のルートに限定されていたとも言う。
確かに女性が若い物売りに飯を食わせて引き込むとは、奇異な目で見られても仕方ないだろう。ところがこのお里という隻腕の女性、そんな野暮な話が霞むほどに肝の据わった女性であった。売られた喧嘩は徹底的に買う、あまりにも気合の入った女性の活劇としてぜひ読んで頂きたい。
肝っ玉の据わった女房
鯉の肝、つまり鯉の胆のうは煮ても焼いても食えない。なまじ傷つけてしまうと、他の身まで台無しにしてしまう。そういった揶揄から仇名を付けられている鯉肝のお里ではあった。しかし多少の事では動じず、じっくりと構えて物事に対峙する姿勢はまさに肝っ玉が据わっている女性とは見えないだろうか。
その昔、「肝っ玉母さん」という人気作品もあったが、しっかり者の女性は世の男性の憧れなのかもしれないな。情けない旦那と頼りになる女房の姿は絵にもなるのだが、男性もしっかりと構えねばならないとしみじみ思うのだ。
尋常ではない胆力
たとえ腕を斬り落とされようとも、その程度でひるむお里ではなかったか。どんな事へも真っ直ぐに向かい、覚悟を決めて挑まれたならば盗賊ですらどうにもならないだろう。それほどの胆力を持つだけに、物事を見据える能力にも長けているらしい。おひろと仁三郎の関係を見抜いていたのは見事だったな。
『浅草・鳥越橋』で鬼平の密偵となったおひろと、それ以前から密偵の仁三郎との仲もどうやら急展開を迎えそうだ。様々な過去を乗り越えてきた二人だからこそ通じ合う何かがあるのかもしれないな。これから先の二人の関係がどうなるのかも楽しみだ。
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滝田 莞爾
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