この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第15巻収録。昔、平蔵と付き合いのあった茶屋の娘・お百が、盗賊の押し込み計画を密告してきた。それがもとで盗賊の捕縛に成功するが、盗賊の頭はなんとお百の息子・紋蔵だった……。極刑の前夜、平蔵が紋蔵に軍鶏鍋と酒をふるまうシーンが泣ける、心暖まるエピソード。
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貧乏御家人の厳しい暮らし
題名通り密告により伏屋の紋蔵一味を捕縛した平蔵。その伏屋の紋蔵は彦十の面通しによって、若かりし平蔵とも旧知の仲だった横山小平次の息子と分かる。
ただし平蔵が400石の直参旗本(将軍に会える)の跡取りに対して、横山小平次は百俵取りの御家人(将軍に直接会えない)と武士でも差がある。
作中で“百俵六人泣き暮らし”と書かれているように、百俵(現在の収入で300万円くらい)で家族を養うだけでなく、定められた使用人なども置く必要がある。そんな小平次が、「嫁も取れねえ泣き暮らしでよォ」と涙を浮かべて嘆くのも当然だろう。
庶民にとって殿様とは
若き横山小平次に付いたあだ名が“殿さま小平次”だ。「百俵取りで殿様?」と思うかもしれないが、当時の一般庶民から見れば下級武士であっても殿様扱いは珍しくない。
例えば平蔵の妹であるお園も『隠し子』にて初対面で身分すらはっきりしていない平蔵に、「お殿様のお口には、合わないでしょうけど」と言っている。
ただし平蔵は元より若い横山小平次もなかなかの貫録があるのは事実だし、お世辞を込みで“殿様”と呼んだ可能性はある。しかし同心の木村忠吾などが殿様と呼ばれるようになるにはあと10年、20年はかかりそうだ。
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誰も救えなかった鬼平の男泣き
本作のように平蔵の若い時分からの関わりを描いた話には『おかね新五郎』『兇賊』などがある。若かった頃の平蔵が助けたお百が紋蔵の母親であり、密告した張本人と分かったものの、当のお百も盗賊仲間と相打ちになる形で命を落としてしまう。
父親の小平次は若くして労咳で病死、強盗に身を落とした紋蔵も死罪となるため、結果的に親子三人が悲しい最後を迎えることになる。
満月を見上げて立ち尽くす平蔵。「泣ける」と彦十が言うものの、平蔵は実際に涙を流すのではなく心で泣いている。「どこかで救える道があったのではないか」と考えていそうだ。
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研 修治
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