この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第145巻収録。不動産業を営むジャンセンは、10年前の一大プロジェクトで不動産王・クランプとの賭けで負け、利権を失った過去があった。10年後、その賭けがイカサマだったことが発覚し、クランプへの報復を決意するジャンセン。依頼を受けたゴルゴは、クランプが観賞する劇中の“ある場面”に活路を見出すが……。脚本:氷室勲
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クローズドサークルでゴルゴが挑む完全犯罪
ゴルゴの仕事は基本的に完全犯罪であるが、今回は慎重に慎重を重ねて完全犯罪に仕立て上げている。ミステリ用語で言うならば今回の舞台はクローズドサークル(外界と遮断された状況下、密室劇)だ。その必然性がいつもより高いということである。
しかも今回は、相手方のテリトリーでの仕事なので、武器を持ち込むことができない。というわけでスナイプとは一味違う道具立てで挑むゴルゴ。
今回パートナーに選んだのは、おなじみ銃器職人デイブ・マッカットニー(『死刑執行0:01AM』『軌道上狙撃』など)である。今回(も?)トリッキーな依頼であったが、その場の試射で一発合格なのはさすがの仕事ぶりである。

ターゲットはドナルド・クランプなる人物
依頼人のターゲットとして不動産開発で財を成したドナルド・”クランプ”なる人物が登場する。普段は”クランプ”タワーに居住しており、これは明らかに後の第45代アメリカ大統領ドナルド・トランプであることがわかる。
今エピソードが描かれた2001年ごろ、のちのトランプ氏がアメリカ大統領になると予見できた者はおるまい。
現大統領や元大統領がその職務をもってモデルとされるケースは多々あるが、のちの大統領をゴルゴが射殺してしまうというのは、後世から見ると曰く言い難い面白味である。長く連載が続くゴルゴ作品だからこその魅力なのである。
謎解きボディガード・ダニー
依頼人であるジャンセンのボディガードであるダニー。雇い主からは有能と評価されると同時に”カタブツ”とも愚痴られている存在であるが、ゴルゴはそこに好感を持っているようである。
クランプ殺害後、このダニーが謎解きをゴルゴに開陳していくことで読者は伏線がひとつずつ回収されている快感に浸ることができる。
ダニーのその洞察力、推理力、雇い主への忠誠心、どれをとっても素晴らしく、立場が異なればゴルゴの好敵手となりうる存在ではなかろうか。当のダニーはゴルゴの一発必中の自信に内心舌を巻いているのであるが。

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片山 恵右

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