この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第9巻収録。平蔵の嫡男・辰蔵が贔屓にしていた妓・お照が身請された。身請したのは、津山薫という女だという……。一方、小間物問屋の押し込み事件を捜査していた平蔵は、一味の頭が津山薫に酷似しているとの情報を得る。はたして、女賊・津山薫の素性とは……?
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劇画版有数の耽美回
劇画版では結構な頻度で男女の営みの場面が描かれる。普段でもエロティックなのだが、通常以上に耽美だったり、男女の営み自体が話のテーマに深く関わったりする回がある。この白まむしもまさにそうだ。
いや、白まむしの場合は男女ではなく女性同士の性行為が描かれるのだが。実のところ、この白まむしでは、性行為自体は場面の描写としてそう多くは出てこない。この回より描写が濃い話は多い。
だが、話を通してずっとどこかエロティックな雰囲気が流れている。女でありながら女を愛し、剣術を極め、盗賊となった津山薫の壮絶な色香のためだろうか。
忠吾と辰蔵、ふたりの若者
長谷川辰蔵は長谷川平蔵の長男だ。話の中で彦十から「なにせ若え時の銕っつあぁんにそっくりだものな」と言われるほどの放蕩息子である。辰蔵は同心の木村忠吾から花街であるいろは茶屋を教えられ、通い詰めるようになる。
今回はたまたまここから盗賊を討ち取るきっかけが得られたが、褒められた話ではない。劇画版では、原作以上に忠吾と辰蔵は序盤どうしようもない若者として描かれている。
女遊びに溺れて大金を使ったり、気弱な人間を過度にからかってみたり。しかし話が進むにつれ、ふたりとも人間の機微を知り、大きく成長していく。ふと見たWikipediaに「最も成長幅が広いキャラクター」とふたりが評されていたが、なるほどと膝を打った。
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津山薫の心境はどうだったか
津山薫は女だてらに恐るべき剣の使い手だった。その薫を討ち取ったのは、昔剣術道場で同門だった同心、沢田小平次だ。気になるのは、薫も沢田のことを覚えていて、しかもおぼろげにでも近況を知っていたことだ。
薫はすさまじい美女でありながら剣の腕が立つというのもあって印象に残るのも当然といえるだろう。だが、薫からすれば沢田は何人かいる同門のひとりという存在だ。まして共に道場に通っていた頃は沢田は薫に歯が立たなかったというのだから、沢田が特別に印象に残るような剣士だったわけでもなさそうだ。
それでも剣を構えた時、薫こと森初子は「沢田殿が御先手組におられることは承知していましたが……まさか火盗改方とは……」とこぼす。沢田個人に対して特別な感情があったかどうかまでは判らないが、少なくとも道場に通っていた頃が薫にとって特別な時代であったことが伺える。
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大科 友美
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