この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第51巻収録。疱瘡除けにご利益があると評判の“太郎稲荷”が、突然、庶民の参拝を禁じたという。釈然としない平蔵は、見まわりついでに太郎稲荷へ足を運ぶ。そこで見たものは異常なまでの警戒体制だった。背景には参拝の鑑札を、高額で売り出している柳川藩への庶民の怒りがあった……。
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江戸時代の孤児たち
様々な理由から肉親との関係が断たれて、孤児となってしまう子供たちは古くからいたのだな。悲しい事ではあるのだが、江戸時代には農村部で特に多かったらしいぞ。ただし裕福な人や寺などが孤児を引き取って育てた歴史も残っているのだ。
確かに、子供はいつの時代でも宝物として扱って大切に育てた方が良いだろうな。本作は成長した孤児が恩返しをするストーリーで展開していく物語だ。子供に関しての疫病対策や、それを取り巻く江戸の環境にも触れられているぞ。
疱瘡とは?
疱瘡と表現されるのは、天然痘という感染症の事だ。非常に感染力が強く当時の致死率も50%近くあったというから、赤子や幼児にとっていかに重大な疫病であったか分かる。江戸時代にも天然痘は悪い神様として恐れられていたようだ。疱瘡神とも呼ばれ、日本各地に疱瘡神除けの稲荷や行事が多く伝わっているぞ。
多くの方が一度は見た事があると思うのだが、福島土産の“赤べこ”は赤色を嫌う疱瘡神を除ける為に作られたと言われているのだ。他にも天然痘除けの玩具は各地に伝わっているので、地元のお土産をチェックしてみるのも良いだろう。
余談だが、芋洗坂と呼ばれる坂が江戸界隈にも数か所残っている。この芋は食べる為の芋ではなく、天然痘の事を示しているのだ。天然痘の治癒を祈願して水で洗う伝統から、芋を洗う、と名付けられている事になる。つまり天然痘の治癒を祈願する神仏などの近くにある坂を芋洗坂と呼んだという訳だな。
悪しき金には手を付けない
自らを育ててくれた寺と和尚への恩返しとして金を渡してはいるものの、和尚の目はごまかせなかったという訳だ。正当に得た金ではない、つまり犯罪などで手にした悪いお金と把握していた和尚は金を保管しておく。
後にこの行為が元孤児たちを救う事になるのだが、やはり和尚ともなれば悪しき金、善き金の区別が付いたのだろうか。身体は大人になったものの、心はまだ子供のままだった元孤児たちも、きっと上手くやり直せる事だろう。
和尚は彼らの一生を案じて道を示してくれているとは、いやはや崇高な心を持っていると感心してしまった。江戸時代の疫病対策や武家社会との兼ね合い、色々な見どころのあるストーリーに興味のある方にはお勧めの一作となっているぞ。
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滝田 莞爾
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