この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第8巻収録。一家十七人皆殺しという凄惨な事件が発生。現場には狐火一家の札が残されていた。平蔵の恩人でもある初代・狐火の勇五郎は他界しているため、平蔵は二代目を疑う。一方、密偵のおまさは狐火一家の盗人宿にあたりをつけるが、二代目とわりない仲だった過去があり、平蔵には言い出せず……。
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「新宿」の読み方は?
本作の舞台の1つが新宿、と言っても「しんじゅく」ではなく「にいじゅく」と読む。東京都葛飾区のほぼ真ん中辺りに位置し、現在も町名として残っている。
また歌川広重の浮世絵「名所江戸百景」でも「にい宿のわたし」の名前で、帆掛け船が行き来するのどかな光景が描写されている。1884年に中川橋が架けられたことで渡し船はなくなり、現代に至ってはしっかりと護岸され、両岸は建物で埋まっている。
しかし新宿と亀有を結ぶ中川橋の近くに往時をしのばせる記念碑などがあるとのこと。鬼平ファンなら、当時と変わらない川の流れを感じるかもしれない。
おまさの心情を察する平蔵
小房の粂八や大滝の五郎蔵を始め、平蔵の密偵として働く元盗賊達は何人もいる。しかし平蔵が、「お縄にかからぬうちに、われから望んできてくれたのは、お前だけ」と言うように、年少の頃から平蔵を知っており、平蔵を心から慕っているのがおまさだ。
ただし本作のおまさは今一つ働きが鈍い。新宿の渡しで以前の知り合いを見かけたことすら、彦十にも打ち明けきれずに悩むくらいだ。
もっともそれに気づかない平蔵ではない。おまさの雰囲気から過去の男女関係を感じて全て任せたところは、さすがに平蔵の懐の深さと言うべきだろう。
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本格の盗賊の哀れな行く末
平蔵シリーズでは本格の盗賊も大勢登場するが畳の上で亡くなったのは、『白根の万左衛門』の万左衛門や『狗』での飯留の勘八など数少ない。さらに彼らにしても気がかりを残したままの往生だ。
本作では兄の又太郎が、「真のお盗(つと)めをしねえやつは、畳の上じゃしねないのだぞ」と弟の文吉に諭すところは、読者なら誰でも納得するところ。
結果的に又太郎は文吉を手にかけてしまうものの、平蔵は又太郎の右腕を切り落とした上で京へと逃している。故郷に戻った又太郎は病で亡くなるのだが、幸せな余生を送った数少ない盗賊と言えよう。
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研 修治
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