簡単なあらすじ
ワイド版第36巻収録。忠吾と細川が”恋のバトル”を演じた人気の女中・おけいが身請けされた。身請けした男は視覚障害をもつあんま師・彦の市。おけいの借金を肩代わりしたうえ、三十両の支度金と月々二両の手当まで出すという。しかしこの彦の市、じつは目が見えていて、盗賊の嘗役として活動しているのだった……。
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江戸時代のマッサージ師
街中にマッサージ店が乱立する現在。亡くなった職業の1つに座頭(ざとう)がある。本作で描かれているように鍼灸や按摩のほか、三味線や琵琶などを演奏する芸人として、ひとつの確立した地位でもあった。
このあたりは『けんか按摩』にも詳しく描かれている。そんな按摩の彦の市が盗人一味の手引きをしていたと分かったところから話が大きく展開する。
ただしそのきっかけとなったのは茶屋女の取り合いであり、嫉妬した木村と細川が偶然、彦の市の目が見えていたと分かったことにある。既に結婚している二人ながら、すけべ心が思わぬ形で役に立ったものだ。

松永弥四郎の頭髪の謎
変装の名人としていろいろな場面で活躍する松永弥四郎。本作でも佐嶋が、「変装の名手といえばやはり松永で」と言っているくらいで、殺された彦の市に代わってあんまとして盗賊が押し入る予定の店に潜入する。
そこで見逃せないのが松永の坊主頭だ。『夜針の音松』では僧侶に化けるため木村に髪を剃らせている場面がある。悪党相手でも変装にそこまで凝るのは松永くらいだ。
さて、松永はその後も坊主頭を維持していたのだろうか。『炎の色』では虚無僧に化けつつも、編笠の下はちょんまげだ。これはかつらか。それとも伸ばし直して髷を結っていたのだろうか。
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強い女と懲りない男達
茶屋女のおけいをめぐって相打ちになった彦の市と尾君子(猿)小僧の徳太郎。その後に大捕り物があったことを、おけいも聞いてはいるようだ。
しかし平蔵曰く、「何もなかったような顔をして、またぞろ愛宕山女坂で、茶汲み女をしているそうな」とのこと。病気の父が居て、囲われていた彦の市が亡くなったのでは仕方のないことながら、女の強さを感じさせる。
茶屋に戻ったおけいをめぐって木村と細川がまたもめるのだが、そこでもおけいは微笑んでいるのみ。しかしどこか寂しそうにも思えるのは、我が身の不幸を理解しているからなのかもしれない。

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研 修治

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