この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第2巻収録。60年代フランスの一斉ストライキを題材にした一編。フランス政府はストライキ首謀者の暗殺をゴルゴに依頼するが、直後に撤回。政府は秘密を知ったゴルゴを消すため、刺客を差し向けるのだった……。ゴルゴ13と殺人集団・薔薇十字同盟の死闘!
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60年代作品は依頼者裏切りの宝庫
「依頼人のウソや裏切りは絶対に許さない」これはゴルゴが依頼人に対して求める約束事のひとつだ。この約束事を破った高慢な既得権益者たちが、ゴルゴからの制裁によって身を滅ぼすストーリーは人気カテゴリーのひとつとなっている(と思う)。
現在であれば依頼人はおろかゴルゴ13への連絡方法を知る誰もが認知している絶対ルールだが、連載開始間もない60年代作品には、いとも簡単にこのルールを破ってしまう輩が多数登場していた。
本作でゴルゴを裏切る依頼人はフランスの官僚だが、国家の中枢に位置する人間に限ってゴルゴを裏切る傾向にあるのもシリーズの特徴だ。このあたりは体制側に対する痛烈な皮肉に聞こえなくもない。
必殺の刺客・薔薇十字同盟
前述のフランス官僚は依頼をキャンセルした後、秘密を知ったゴルゴを消しにかかる。が、単なる組織の構成員たちと対決するよりも、必殺の殺人集団と一戦交えるストーリーのほうが読者としては面白い。本作で差し向けられた刺客は、中世から存在する伝説の秘密結社「薔薇十字団」をモデルにしている薔薇十字同盟だ。
このあたりの設定もいかにもミステリチックで「ありそう」と思わせてくれる。他に裏切った依頼人が必殺の殺人集団を差し向けるエピソードでは第58巻収録『110度の狙点』があるが、ここで描かれるのはサウジアラビア王室おかかえの必殺部隊“ハリージュ派”とゴルゴの死闘であった。興味のある方は一読されたい。
女工作員・シャルルの白ガーター
60年代作品といえば物語を彩る存在としてゴルゴ・ガールの登場が不可欠だった。本作で登場するのは薔薇十字同盟の女工作員シャルル・リネットである。シャルルは一般女性を装いゴルゴに近づくが、警戒したゴルゴは彼女に服を脱ぐように命じる。
シャルルが服を脱ぎ、露わになった肉体が身に付けていたものは白いガーターとストッキングだった。この画は当時のコミック界では斬新であり、少年読者たちを煽情していたであろうことは想像に難くない。少年漫画からの脱皮にかける、さいとう先生の気概が伝わってくる懐かしい一コマである。
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町田 きのこ
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