この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第31巻収録。ユダヤ人資産家のオルガ・シュトラウス。彼女は十代のころ、ナチスの将校に暴行され続け、女性としての感情を失ってしまっていた。そして人生を奪った将校が、現在も生きていることが判明。将校抹殺のためゴルゴを雇ったオルガだが、視覚障害をもつ彼女には現在の将校を判別できなかった……。脚本:外浦吾郎
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オルガの仇敵は誰?サスペンス仕立ての一作
今回のゴルゴへの依頼は、三人の元将校の中からオルガの仇敵「あの男」を突き止めて始末するというもの。しかもゴルゴが依頼を果たす前に、その敵によってオルガが逆に殺害されてしまう。
このようにサスペンス仕立てのハラハラ感が楽しめる本話だが、敢えて言うなら、三人の内の誰が「あの男」なのか、読者が推理を巡らせられる手がかりがあればもっと面白かったかもしれない。もっとも、ゴルゴ自身も推理で敵を突き止めることはできず、屋敷に踏み込んで初めて「あの男」の正体を知るという流れなので、追体験としてはこの描き方で正解なのかも?
依頼人の心情を代弁する珍しいシーン
不要な話を聞かされることを好まないゴルゴ。今回も、標的への積年の恨みをとうとうと語るオルガの長話をぴしゃりと遮り、「用件を……話してくれ……」と本題を急かしている。
だが、そうは言っても少しは彼女の境遇に同情する部分もあったのか、ゴルゴはオルガの死後も彼女の標的を執念で追い詰め、ラストでは命乞いをする標的に対して「14歳のオルガは……そのセリフもいわせてもらえなかったそうだな……」と言い放つ。引き受けた仕事は依頼人が死んでも遂行するというスタンスの表れだけではない、ゴルゴの感情が垣間見えるエピソードだ。
律儀な情報屋を襲う不幸なとばっちり
本話でゴルゴを追うユルゲンス警部は、ユーゲント出身の無骨派。捜査のためには荒々しい手段も厭わない彼だが、そのアオリを受けて可哀想な目に遭っているのが、ゴルゴに標的の情報を売った情報屋だ。
この情報屋は、大金を積んだゴルゴのために急いで情報を揃え、後に警部に踏み込まれた際にも利用者の秘密を守ろうとした律儀な男だが、警部には銃床で二度もぶん殴られて情報を吐かされた。その上、ゴルゴに渡したファイルも結局燃えてしまって彼の役には立たない。オルガの悲惨な過去とは比べるまでもないが、私はこの脇役の不憫さが忘れられない。
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東郷 嘉博
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