この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第70巻収録。英国ジョッキークラブの理事長・グレイは、混血馬である事実を隠しサラブレッドと称する馬・ギルフィを、伝統に相応しくないとし、ゴルゴにギルフィの始末を依頼する。一方、ギルフィの育て親・シーリアは、自慢の狙撃術をもって暗殺者(ゴルゴ)を始末しようとするが……。
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馬への愛溢れるシーリア
没落貴族の出身で競走馬の育成をするシーリアの馬への愛が随所にあふれるエピソードである。馬を愛するがゆえの行動力には目を瞠るものがあるが、極め付きはギルフィを守りたいがために裸の自分を差し出す場面であろう。ただしタイミングが悪すぎてゴルゴに断られるという不名誉を授かってしまう。
普通なら屈辱で落ち込むところであるが、馬愛が強すぎるあまり「負けない!私は負けない!」とギルフィを守る執念へエネルギー転換してしまう根性が素晴らしい。ただ、男を愛したことがあるのか、お節介ながら問うてみたいものである。
シーリアの狙撃術
それにしてもシーリアはどこで狙撃術を獲得したのか。英国貴族であるから、幼少期から狩猟や射撃に親しむ環境があったかもしれない。ただ、それだけではゴール前時速60kmものスピードで走る競走馬の手綱を撃ち抜くことができるわけがない。よほど天賦の才に恵まれたのか。
なお、『白いサーカス』ではダウンヒルで滑降中のスキーヤーのビンディングを撃ち抜くという神業射撃を見せた無名のスナイパーも登場している。こちらは競走馬より早い時速100km程度の滑降スキーヤへの狙撃だ。しかもホバリング中のヘリコプターから、である。何事にも規格外の人物はいるものだ。
グレイに英断する勇気が欲しかった
亡き兄の忘れ形見であるシーリアも可愛いし、英国ジョッキークラブの掟も守り抜きたい。葛藤に苦しむグレイの心情は理解できる。その葛藤から生まれる優柔不断ぶりには首をかしげざるを得ない。結局シーリアも自分も命を落とすことになるのだから、そこまでして守るべき掟であったかと第三者には思える。
それよりも血統の不備を発表してスタッドブックの訂正を図るべきではないか。しかしながら名誉と伝統を重んじる英国紳士にとって、不名誉を甘受するくらいなら死を選ぶべし、ということなのだろう。最後の場面で言い訳をしない気高さは評価できる。
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片山 恵右
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