この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。自分を犠牲にして、他人のために尽くす「利他」。殺人者に「利他」はあるのか? そもそも殺人は「悪」なのか? 悪だとしてそこに等級はあるのか? 孤高の哲学者を狂言回しに、主人公・デューク東郷の倫理観に鋭く切り込んだ哲学的・文学的な一編。
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哲学者の思考
本作で中心となるのは大学で教鞭を取るカミュ教授。彼の何気ない言葉に周囲の人々が感嘆し、空港の係員から「我が国を代表する哲学者」と言われるくらいの有名人だ。彼が歩いて大学に向かう光景からすると、名門ソルボンヌ大学(人文学部に哲学科があり)の教授らしい。
作中で「利他(他人に利益となるような行動や思考)」について追及するカミュ教授は、自らの病気ですら利他を究明する手掛かりに使っている。ゴルゴに狙撃されたことで、彼の願いは違った形で叶ってしまのだが、野犬の「利他」となってもカミュ教授は笑って受け入れそうだ。
ゴルゴの行動原理
カミュ教授は、「彼の信じている神を知りたい」とゴルゴのような殺し屋の行動原理を追及したいと口にしている。『日本人・東研作』『静かなる草原』などに登場するジャーナリストのマンディ・ワシントンは、ゴルゴが持つ行動原理の一端を知るものの、一線を退いていた彼は、それ以上の追及を止めている。
カミュ教授はゴルゴが住む世界を、「利己も利他もない世界」と断定している。であれば、もうゴルゴ自身が神の領域にいると言っても良さそうだ。学問の追及に死すら恐れないカミュ教授なら、ゴルゴから更なる言葉を引き出せたかもしれない。
しっぺ返しがありそう
フランス軍事省のガラン副大臣は、倫理委員会で超人兵士を推進する発言をするよう、大金を払ってカミュ教授に了承を得ている。しかしマスコミに秘密が漏洩しそうになると、カミュ教授の殺害をゴルゴに依頼した。「ひどいことをするな」と思うものの、高名な哲学者であっても国や政府からずればひとつの駒なのだろう。
『バイオニック・ソルジャー』ではアメリカ軍の超人兵士がゴルゴに挑んで敗北している。超人兵士の行き着くところ、S級スナイパーであるゴルゴとの対決は必然。その時にガラン副大臣らが巻き込まれて死ぬ未来もありそうだ。
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2024年7月現在、単行本化はされていません。単行本化までしばらくお待ちください。
研 修治
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