この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第2巻収録。人生に失望した女性の厭世観をテーマにした一編。彼女は偶然ゴルゴと出会い一夜を共にする。懐かしい70年代の情事シーンが楽しめる作品でもある。ゴルゴが一般女性の尾行を察知できず、狙撃現場を目撃されてしまうという失態も見どころ。脚本:小池一雄
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これがゴルゴ?本格ラブストーリー
ゴルゴシリーズ第6話は旅情あふれる本格的なラブストーリーだ。これがゴルゴ作品とは思えない。冒頭から痴話げんかをして女性を追い払うゴルゴも珍しい。若いゴルゴ読者にもぜひ読んでもらいたい初期の名作だ。
それにしても当時の雑誌連載で読んでいた読者は驚いたのではないだろうか。何しろ前作の第5話『檻の中の眠り』は刑務所に収監されているターゲットを始末するために、ゴルゴ自身もわざと収監されるハードボイルド中のハードボイルドだ。舞台が刑務所ということもあり女性は一切登場しない。5話から6話への落差がすごい。
依頼者もターゲットも誰なのか描かれない
依頼者・ターゲットが誰なのか全くの不明である。さらにゴルゴ以外の登場人物についても素性、名前も表現されない。ゴルゴも居合わせる女性も偶然、ニューヨークからノルウェーのトロセムへ移動しているが、このあたりの事情も描かれない。
説明的な描写を避けることで文学的な雰囲気が醸成され、サイレント映画を見ているような、またはフランス映画を見ているかのような気分にさせられる。狙撃の場面でゴルゴは2弾放っているのだが、そこの必然性についても説明はされていない。エピソード全般に余韻が残る描写だ。このあたりの余韻は名作『海へ向かうエバ』に通じるものがある。
恋の始まりはいつなのか
本作のヒロインには名前が与えられていない。彼女の髪色から、ここでは”ブルネット”と呼ぶことにしよう。読者としての興味はブルネットがいつゴルゴに恋心を抱いたかである。ポイントは5回ある。マンハッタンのバー、タクシー、飛行機で乗り合わせた時、ゴルゴに心のうちを見透かされた時、胴体着陸の瞬間。
タクシーでは雨の中、ブルネットは途中下車しているのでそれ以降なのか。それともブルネットの途中下車はゴルゴの気を引くためなのか。男女の駆け引きにおいても達人のゴルゴには手を取るようにブルネットの心理がわかったであろうが、凡人には難しいところだ。
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片山 恵右
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