この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第157巻収録。悲願のEU加盟をめざすトルコ。加盟条件となる基準を満たしているかを厳しく問われる状況で、内乱やテロの防止に余念がない当局は、かつて追放したグルグック博士を復帰させる。明晰な頭脳を持ってテロを企てる黒幕にせまるグルグックの推理が痛快な一編。脚本:麦丘健二
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トルコとヨーロッパとの関係
EU(欧州連合)への加盟で長い間議論が続いているトルコ。EUの前にあったEC(欧州共同体)の頃からトルコの加盟について紆余曲折あった。2004年に発表された本作。
EU加盟に向けて揉め事は避けたいMIT(トルコ国家情報機構)の情報次官と、彼に助力を求められたグルグック博士の動向を描きつつ物語が展開する。結果として彼らの活躍などでPKK(クルド労働者党)によるテロ行為は未然に防いだものの、15年以上たった現在もトルコはEUに未加盟のままだ。その間、逆にイギリスが脱退するなど誰が考えただろうか。
ゴルゴ並みのスナイパー
本作で見逃したくない場面がある。ボスポラス海峡を通行するタンカーがテロの標的になると考えたグルグック博士らは、腕の良い狙撃手を連れてインスタンブールの高所から海峡を看視し、爆弾を乗せたゴムボートを発見する。
「ゴムボートの中にある、箱を狙撃しろっ」と次官に命令された狙撃手は一発で箱を撃ち抜いている。海峡の幅は狭いところでも600メートル以上。広い場所では3キロを超える。暗視スコープを使ったとは言え、夜に数百メートル(1キロ以上かも)離れた動くゴムボートに一発で命中させる腕前。ゴルゴも驚きそうな技量ではないだろうか。
暗殺はゴルゴの犯行か?
本作に登場するゴルゴはわずかに2コマ。彼の運転する車の描写を含めても計8コマに留まる。つまりゴルゴが依頼を受けたシーンや実際にターゲットを狙撃をした状況などは全く描かれていない。グルグック博士らはテロの黒幕と考えられる共産主義者のクルド人を推理してその自宅に乗り込んでいく。
しかし眉間を撃ち抜かれていた遺体を発見して、「ゴルゴ13の……仕事かっ!?」と驚いている。つまり状況証拠による推測に過ぎない。ゴルゴの狙撃と断定しきれない事件には『リトル・ハバナ』『天使の一滴』などがある。脇役に徹するゴルゴも面白い。
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研 修治
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