この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第166巻収録。武装ゲリラ「パラミリタレス」の壊滅を請け負ったスゴ腕の傭兵コンビ、パサンタとアディカリ。そして二人の仕事を援護するため送り込まれたゴルゴの活躍を描く一編。ひさびさに見応えのある傭兵キャラが登場。脚本:麦丘健二
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グルカ兵とは
本作はグルカ兵を描いた物語だ。グルカ兵とは、イギリス軍などに属するネパール人傭兵で勇猛果敢なことで知られる。グルカ兵の歴史は長く、起源は1800年初頭にまでさかのぼるという。太平洋戦争中は日本軍も苦しんでおり、『ビルマの竪琴』でもグルカ兵の勇猛さについての記述が見られる。
現在でもグルカ兵は存在しており、イギリス陸軍にはグルカ旅団という専用の旅団があるし、インド軍やシンガポール警察などでも活躍している。ちなみに、「グルカ」というのはネパールの地名の一つで、民族名ではない。私も本稿を書くまで、グルカ族という民族出身だからグルカ兵だと思っていた。思い込みは恐ろしい。

第六感はあるのか
本作に登場するバサンダとアディカリは、グルカ兵のなかでもとりわけ優秀で、フリーランスの傭兵として二人一組で活動している。バサンダが狙撃、アディカリは白兵戦担当だ。二人組といえば『血まみれのマハ』のイレーナ、モニカ姉妹などが思い起こされるが、バサンダとアディカリもなかなかの連係を見せる。彼らを育てたのは、「ネパールの鷹」と呼ばれる男だ。
現在は戦場での負傷が元で、病院暮らしをしている。彼がネパールの鷹という異名を取るようになったのは、危険を予知できる能力があったからだそう。そんなオカルトな、と思われるかもしれないが、危険を予知する能力というのは実際にあるのかもしれない。いわゆる第六感というやつだ。
古くはタイタニック号の事故から、最近は9.11テロまで、第六感で直前に危機を逃れた事例は古今東西に数多くあ り、あながち馬鹿にもできないのではないだろうか。そんなネパールの鷹がなぜ戦場で負傷したのかというと、その直感を信じられなかったからだそうだ。確かに、仮に第六感があったとしても、自分の直感を信じるのが一番難しいのかもしれない。
ゴルゴの敬意
今回ゴルゴが請け負ったのは、二人への直接的なサポートではない。最後の最後でどうしようもなくなったときに、彼らの名声を守るためのものだ。確かにこれはゴルゴにしかできないだろう。バサンダの狙撃の失敗を見越して、バサンダとタイムラグがほとんどない状態で撃たなければならないからだ。
しかし、ゴルゴはやりのける。自らの弾が命中したと信じて死んだバサンダ。ゴルゴは彼らの名声だけでなく、彼ら自身さえも満足させた。これこそがゴルゴの、同じプロフェッショナルに対する敬意の表れなのではないだろうか。

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秋山 輝

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