この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第186巻収録。フランスの変電所でテロ未遂が発覚。物理学者のミルザは、犯人の目的が国際研究施設CERN(セルン)への電力遮断にあると推理。テロリストの陰謀を阻止したいミルザは、過去に一度だけ遭遇したことのあるゴルゴを、CIAの友人を使って探し出すことに成功するが……。
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天才に”別次元の天才”と言わしめる
高速中性子被曝の恐れを掻い潜ってセルン内部で冷静に臨界事故を防ぐゴルゴ。ロサンゼルス近郊で臨界寸前の原子力発電所の危機を食い止めたゴルゴシリーズの中でも評価の高い『2万5千年の荒野』を彷彿させる。
今エピソードもセルン内部でのゴルゴの活躍は手に汗握らずに読み進められない。専門家でも難解であろうセルンの構造把握や背後の企みを瞬時に察するなど、ノーベル賞級の研究を進めるミルザをして”別次元の天才”と言わしめるゴルゴの活躍に素直に感服する。ゴルゴこそ、ミルザの研究する異次元からこの次元(世界)にやってきたのではないかと素人は妄想してしまう。
珍しいインド系美女
さて、そのミルザ。インド系アメリカ人ということでこれまでのゴルゴシリーズには登場してこなかったタイプのエキゾチックな容貌の美女である(『北緯九十度のハッティ』の依頼者としてインド美女が登場するが少しタイプが異なる)。
ミルザはその容貌はもちろん、先鋭的な研究テーマに取り組む頭脳、弁舌、行動力とどれをとってもずば抜けてレベルの高い人物である。周囲の男には高嶺の花として映り、近寄りがたい女性として敬遠されそうである。ミルザの魅力はまだまだあるのではないか。再登場やスピンオフでさらにミルザの活躍を期待したい読者も多いはずだ。
リトアニアはICT急成長国
EU内でクラウド事業の覇者を目指すイルヴェスの事業家としての戦略や手腕は見事である。もちろん目的のためなら犯罪でも破壊でも躊躇しないその手法は、道徳的には全く賛同できないし、ライバル企業にこんな経営者がいたら、まともな競争にならないからたまったものではない。恐るべし”シャットダウン計画”。
さてイルヴェスのバルト・クラウド社はリトアニアの企業として描かれ、意外な印象だ。実は日本ではあまり知られていないが、リトアニアはICT産業が急成長している国なのである。『ビリニュスの光と影』で描かれたソ連独立当時のリトアニアからすると隔世の感である。
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片山 恵右
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