この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第84巻収録。ロイズ保険組合のミルトンはレバノン沖で多発する、犯罪組織による貨物船失踪事件で頭を悩ませていた。莫大な被害を被ったミルトンは、組織のボス・クレシスの抹殺をゴルゴに依頼。アジトに潜入したゴルゴは、クレシスの愛人である心理学者・マリアの策略にはまり捕獲され……。脚本:K・元美津
スポンサーリンク
不意を突かれたとしても
ゴルゴほどのプロフェッショナルでも、不意を突かれてガスを嗅がせられることもある。とは判っていても、ゴルゴの驚愕した表情も、ガスを吸って倒れこむ姿も見慣れず、いっそ読んでいて心がざわめいてしまう。
しかし意識のない状態で自白剤を使われても、ゴルゴは己の素性を明かさず、偽りの設定をひたすら繰り返す。プロ中のプロは自らを洗脳することもある、と作中で言われるが、現実的にはもちろんあり得ない話だろう。しかしゴルゴであれば当然そのくらいできる、と納得してしまう。
無意識下の連想ゲーム
裏社会の住人であり、究極のフリーランスであるゴルゴだ。普段彼の頭の辞書に給料(ペイメント)も税金(タックス)もあるはずがない。
そのゴルゴの口からペイメント、タックスというフレーズが出てくる姿はいっそシュールだし、拳銃で恐怖と西部劇を連想する姿はシリアスなシーンでもつい吹き出しそうになってしまう。しかしその次の瞬間に撃鉄を上げる音に無意識でも反応する様子を見ると、やはりこれぞ我らがゴルゴという気持ちになるのは自分だけだろうか。
二重の裏切りの謎
このエピソードの中で、サリバンという男が保険組合(ロイズ)側の手の内をターゲットに対して明かす場面がある。このサリバン、保険組合のランドール卿からもターゲットの情報の見返りとして1万ポンドもの金額を受け取っている。にも関わらず、わざわざ面識のないターゲットに接触してまで情報を売るのだ。
そこまで金に困っていたり、ランドール卿を憎んでいたりする様子は見られない。何故二重の裏切りをしたのか、いささか唐突な印象を受けるが、しかしいずれにせよ裏切り者として処分されるのは当然ともいえるだろう。
この作品が読める書籍はこちら
大科 友美
最新記事 by 大科 友美 (全て見る)
- ゴルゴ13:第435話『地上の太陽』のみどころ - 2024年7月28日
- ゴルゴ13:第429話『真のベルリン市民』のみどころ - 2024年7月21日
- ゴルゴ13:増刊第73話『ピンヘッド・シュート』のみどころ - 2024年4月24日