この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第27巻収録。ゴルゴとは旧知の間柄で、モーリタニア独立運動の勇士・ボルス。彼は服役中の刑務所で銃殺刑となったが、死の直前、家族にあてた手紙を送っていた。その手紙は大戦中に使用された暗号文が使われており、解読した結果、刑務所長以下2名の殺害をゴルゴに依頼するものだった……。脚本:浜家幸雄
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若き日のゴルゴの姿が描かれる貴重な一作
本話では、旧友の依頼を受けて刑務所に潜入するゴルゴの活躍が描かれるが、敵対人物らは彼を見て一様に「若造」「あんな若さで」といった言葉を述べる。読者は一瞬首をかしげるが、それもそのはず、本話のメイン部分は10年前の出来事の回想なのである。
もっとも、10年前の時点で彼は既に凄腕のスナイパーとして名を知られており、作中での行動も特に未熟という感じはない(未熟さで言うなら第1話などの方がよっぽど……ゲフンゲフン)。本話はむしろ、若い頃から一流の片鱗を見せていたゴルゴの経歴が際立つエピソードといえるのだ。
過酷な独房をものともしないゴルゴの精神力
本作の見所は、なんといっても過酷な独房で60日間も正気を保っていたゴルゴの精神力の凄まじさだ。人間は普通、視覚刺激や身体活動、対人接触などを奪われると、数日で脳に変調をきたすという。実際、米国で独居房に入っている囚人の3人に1人は精神疾患を患っているという報告もある(※)。
そんな環境に60日も耐えたゴルゴの強さは並大抵のものではない。しかも、繰り返しになるが、これは彼がまだ若かった頃の話なのだ。若造と呼ばれる頃から何度もこうした経験を積んだことで、彼は何事にも動じない熟練のプロへと成長していったのだろう。
※出典:AFPBB News『精神むしばむ独居房に科学者ら警鐘、「人間は隔離に耐えられない」』2014年2月22日
スープで脱獄!? 昭和の脱獄王も使った方法
本話では、毎日の食事で出される「塩味だけのスープ」を独房の鉄格子に塗りたくり、塩分で腐食を進行させて鉄格子を壊すという脱獄方法が描かれる。
果たしてそんなことが可能なのだろうかと疑問に思うが、実はこれ、「昭和の脱獄王」と呼ばれた男・白鳥由栄(よしえ)も用いた、由緒正しい(?)脱獄ワザ。白鳥は1944年、味噌汁の塩分で鉄格子を腐食させるという手法で網走刑務所からの脱獄に成功しているのだ。
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東郷 嘉博
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