この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。南米・チリで行われた土地開発の調査。調査官のマルティンは、環境調査の計画書とは別に地下水を汲み上げるための取水井が設置され、村の地下水が不正に汲み上げられていることを発見する。そこには環境調査会社の“黒い思惑”が隠されており…。 脚本:宮口幸治
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環境アセスメントの闇
本作での港湾を始め、ダムや空港など大規模な開発では周辺地域の環境に与える影響を調査する環境アセスメント(評価)を必須とする国や自治体は多い。ただし経済効果や需要予測などと同様、調査を依頼するのは開発側の企業などであることが多いため、開発側の意向に沿った結果になりがちだ。
本作でアセスメントを行うコンサルタント会社は、リチウム鉱山の存在を隠すだけでなく、将来開発の妨げになる住民を追い出す工作まで担っている。ゴルゴの手助けもあって計画は頓挫するのだが、殺人まで犯した役員や責任者が生き延びているのは苦々しいばかりだ。
殺さない射撃
『幻のジゼル』のハイヒールや『G線上の狙撃』のバイオリンの絃ように、殺害を目的としない狙撃依頼は少なくない。依頼人のアマンダから「人を殺さないで欲しい」との願いを聞き入れたゴルゴ。アマンダの危機を取り除くために、建物を停電させたり警備員の拳銃を狙い撃ちしたりしている。
そうした狙撃の中でも興味深いのは、マンホールのフタを何度も狙撃して跳ね飛ばすことで追手の車を止めた狙撃だ。単純に追跡した車のエンジンやタイヤを狙撃すれば車を止めるのは簡単に思うのだが、大事故となって死人がでる可能性を考慮しての判断だろうか。
故郷の明るい未来は?
『キメラの動力』でも描かれていたように、バラ色の未来の一角を担うと考えられている電気自動車。ただし、現在の電気自動車で用いられているリチウムイオンバッテリーは発火の危険性が小さくないことや、安全な廃棄手段が確立されていないことで不安視する向きが次第に多くなっている。
さらにリチウムを採掘する際の環境汚染も無視できない。本作のラストでアマンダは「生まれ故郷が救われた。子どもたちの未来も開けた」と言っている。確かに少なからぬ保証金が出たようだが、近い未来に荒れ果てた故郷とならないよう願うばかりだ。
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2024年7月現在、単行本化はされていません。単行本化までしばらくお待ちください。
研 修治
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