この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第16巻収録。江戸の庶民に愛される町医者、萩原宗順の命を狙う事件が発生した。犯人らしき浪人の”土田”という姓を聞いた宗順は顔色をかえる。じつは宗順、ある大名家でおこった殺人事件に関係しているのだった……。『兇賊』で平蔵をピンチに追い込んだ盗賊・網切の甚五郎一味の生き残りが再登場。
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命を狙われる白髭の医師
歳を重ねた医師と、その過去が織りなすストーリーだ。人々から尊敬される素晴らしい医師の過去には何があったのか。その視点から行くと「雲竜剣走る」に登場した堀本伯道が印象深い方もいるだろうか。
あちらは元剣客という事だったが、果たして“のっそり先生”の過去は如何なものだろう。土田なる悪党に命を狙われるあたり、悪党との関係にも目が離せないぞ。
偶然とはいえども町人が殺害され、売り上げまで盗まれている事から、やはり兇賊の仕業なのだろうか。のっそり先生の過去が明らかになるにつれ、一気にストーリーが展開していくスピーディーな作品だ。
薬研を扱う、のっそり先生
鬼平がのっそり先生と面会した際に、先生が薬研を挽く手を見た鬼平が竹刀ダコを指摘した。これは兇賊の土田に剣術でも引けを取らないといった、話の肉付けだったのだ。
ここで登場する薬研だが、船の上に一輪車を動かすようにして使う。植物や薬を挽いて粉薬や飲み薬にする道具だが、さて薬研堀という地名を聞いた事はあるだろうか。
日本橋にあった地名で“薬研堀”は、川底が薬研のように細かった事からその名前が付いたそうな。七味唐辛子で有名な薬研堀だが、その薬味は薬研で挽いたのだろうか。
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大名家の跡継ぎ
跡継ぎを巡るお家騒動とは、作品の主題としては非常に多く扱われるものだ。正室派と側室派の衝突といった分かり易いものではあった。しかし、のっそり先生は医師としての本分を全うしたに過ぎないだろう。
医師として優れた考えが故に、不名誉を被って命まで狙われるとは悲しい話だ。網切りの甚五郎一味の残党と、大名家の小悪党。彼らに対する鬼平の仕置きは痛快だな。のっそり先生の将来はどのように据えられるのか、その点も含めて是非お勧めしたい作品だぞ。
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滝田 莞爾

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