この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第3巻収録。ゴロツキ親子のダディとリッキーが牛耳る小さな町。この町で車が故障したゴルゴは、翌朝まで来ない列車を待つことになる。町のゴロツキ連中が来訪者のゴルゴを面白がってからかい始めるが、ゴルゴは相手にしない。そんな高飛車な態度にプライドを傷つけられたリッキーは、ゴルゴに銃をむけるが……。脚本:小川新
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ゴルゴの表情が豊か
連載開始から半年後に掲載されたエピソードのため、いわゆる初期ゴルゴが味わえる回のひとつだ。すでにゴルゴの特徴のひとつである『無口』はあるものの、最近のゴルゴと比べると表情が豊かなのだ。
無人駅の古びたベンチにずいぶん疲れた様子で腰掛けたり、女性の叫び声にハッと目を上げてみたり、ゴルゴの直近の仕事であろう殺人に非常線が張られたニュースを聞いて忌々しげな表情を浮かべてみたりと人間味を感じる場面が多くある。ついでに言うなら封がすでに開いた酒をリクエストしているが、これも近年のゴルゴなら手を付けない物のひとつだ。
多くの目撃者が生き残る
ゴルゴは己の狙撃の目撃者をすべて抹消する。まれに例外はあるが、ゴルゴの仕事における強いルールのひとつだ。しかしこのエピソードではゴルゴはごろつきたちを狙撃した後、町の人間を撃つことなく立ち去る。
町の人たちはゴルゴに危害を加えることはなかったが、前の仕事ですでに非常線が張られ、FBIが捜査に入っていることを考えると目撃者は消しておいた方が無難なのではと思ってしまう。倫理的にはもちろん町の人を殺してはいけないし、ゴルゴは職業スナイパーであってテロリストではない。だが、これだけの目撃者を残すエピソードも珍しいのは間違いない。
西部劇でありチャンバラもの
このエピソードはさいとう氏自身やファンのなかでチャンバラもの、西部劇、と評されている。ラストにゴルゴが素早く銃を用意し、樽の陰から飛び出すと同時にごろつきを一気に撃ち殺す2ページは確かに時代劇のチャンバラシーンそのものの爽快感がある。ゴルゴならその辺にあるようなもので町の人もろとも吹き飛ばすような爆弾を作ることもできるに違いない。
しかしきっと、そんなシーンを見ても私たちは気分が晴れないだろう。もちろん『ゴルゴ13』という作品ならではの、ゴルゴの美学に基づいた仕事が読みたいというのは前提として、やはり勧善懲悪のチャンバラものは読んでスカッとする。
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大科 友美
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