この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第182巻収録。元CIA職員のランスフォードは、マフィアの大物フェデーリから殺しの依頼を受ける。しかしランスフォードは請け負った報酬の半額でゴルゴに仕事を依頼し、残りの報酬をピンハネする大胆な金儲けを発案。フェデーリそっくりの役者を使いゴルゴとの会談に臨むが……。脚本:加久時丸
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音羽屋半右衛門を気取った報い
池波正太郎の『必殺仕掛け人』は、金ずくで殺人を請け負う話だが、依頼人と実行犯を仲介する「元締め」が存在し、最も多く登場するのが音羽屋半右衛門である。元締めは依頼金の半分を懐に入れ半金を仕掛け人に払う。
それは仕掛け人も了解済みだが、ランスフォードは仕掛け人の了解なしに半右衛門のような真似をして一攫千金を狙った。今作のように「影武者・そっくりさん」を仕立て上げるには、オブライエンのような映画関係者の協力が必須であるが、売れない役者を安く使って自分たちが大金をせしめようとは、あこぎなことこのうえない。
手指は人生を語る
職業を判断する材料のひとつに「手」がある。世の中が機械化されていなかった時代、重労働を担っていたのは主に男性であったが、最近はハシより重いものは持ったことがないような、すらりとした手を持つ男子も少なくない。
細い手を特殊メイクでごつくすることはできても、その逆は難しい。モリアーティの爪が肺疾患が原因の「ヒポクラテス爪」であることに気づいたのも、手指全体から受ける微妙な違和感からではなかっただろうか。マフィアのボス・フェデーリは売れない役者と違って肉体労働はしないだろうし、爪の手入れも怠らないだろう
わかってないのはどちらだ
ゴルゴに対し「この金の分配について話し合いましょう」というオブライエンに「マダム、あなたはわかっていない」とランスフォードが諭すが、そもそもゴルゴを利用して荒稼ぎしようなどという無謀な企みをする事自体「わかっていない」のであり、彼にマダムを説教する資格はない。
ゴルゴに「フェデーリに金を返してこい」と言われたモリアーティの心の揺れと結末は、おとぎ話の不正直者の末路のようで、少し憐れな気もする。命が助かっただけでも幸運なのに、人間は欲が深い。札束には、人の心を攪乱する魔力が潜んでいるにちがいない。
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野原 圭
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