この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第176巻収録。各国の諜報機関が追い求めるも、未だにその正体が掴めない謎の武器商人・ガブリエル。その側近だった男・アルキニスが、ガブリエルを裏切り、英国MI6に保護を求めてきた。是が非でもガブリエルの情報を聞き出したい英米情報部と、阻止したいガブリエルとの攻防を描く軍事サスペンス。
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敵の警備を突破するのはその敵の機器
本作は、厳戒態勢下での困難なミッションだが、機器の選定、侵入、陽動作戦、変装にいたるまで、狙撃前後のゴルゴの頭脳プレイが随所に光り、密度の濃い内容となっている。
特に侵入に際し、アメリカ軍の探知をかいくぐる機器として、プラスチック素材のロシア製燃料電池水中スクーターや、フランス製特殊閉鎖循環式ボンベなどを使用していて、それらの解説も興味深い。日本も戦前、フランスに軍事技術を学んでいた時期がある。料理研究家の辰巳芳子先生のお祖父様は南フランスで軍艦造成を学びに長期派遣され、晩年は日本語を忘れたほどだった。
男が惚れる良い男
今回のミッションの難関は、海上だけでなく海中一帯が厳戒態勢のガルシア島への潜入だ。周辺でゴルゴが釣りをしていたが、警護へのダミーかと思ったら本当に何かを釣り上げ、チャーターした釣り船の男が「目的の獲物がヒットだ」と叫んでいる。
のんびり釣りなど楽しんでいる場合かと心配したが、実はこの獲物がミッション成功の鍵だった。そして最初はゴルゴを金持ちの変な東洋人としか思っていなかった男が、別れ際に「旦那が何しようと俺には関係ねえことだが無事でいておくんなさいよ」つぶやき、その身を案じているのが印象的だった。
警護側が救われる本末転倒の結末
最後は驚きの展開となるが、さすがガブリエルの度胸も相当なものだ。予想外の結末にどうしたものかとCIAのダルトリーやパトリックが頭を悩ませているところへ「あんたらの報告書には偽捜査官が逃亡を図り・・・」とアルキニスが入れ知恵をして、それに2人が「何事もなかったことにすれば我々の面子も守れるか」と納得する場面が面白い。
だてに現実の修羅場をくぐっていない悪賢い悪党アルキニス、酒が入れば頭の働きも絶好調で、CIAの上を行く。高い酒の経費も無駄ではなかったようだ。どうせ自分の金じゃない国民の税金な訳だし。
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野原 圭
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