この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第179巻収録。住宅価格の暴落により金融危機が深刻化する米国。保険グループMIGでは、資金援助を受けて世界の金融危機を救いたいマードックと、国有化されることを恐れて援助を拒否したいストックマイヤーの対立が勃発。一方、財務長官・ボルトンは極秘裏にゴルゴと会談する……。脚本:静夢
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リーマン・ショックから3カ月
2008年9月15日に起きたリーマン・ブラザーズ・ホールディングスの経営破たん。その後3か月を経て本作を発表している。事実を元に短期間で魅力的な原作や漫画を作り上げたのはお見事と言うよりない。
作中では、サブプライムローン、CDS(クレジットデフォルトスワップ)などについても触れられており、本作を読めば大まかな流れが分かる。合わせて東京都庁近辺の居酒屋でサラリーマンが愚痴をこぼす姿も描いている。金融会社の中間管理職らしき男性の、「良い時代はずっと続くと思い込むものだ」の言葉は耳が痛い人も多そうだ。

依頼人はボルトン長官
当時のアメリカ大統領はジョージ・ブッシュ氏で、それらしい人物が登場する。大統領から一任され、ゴルゴに依頼するのがボルトン財務長官だ。当時の財務長官はヘンリー・ポールソンで、日曜日に大きな政策を発表することから“サンデーポールソン”の異名があった。
本作でも“サンデーボルトン”と評される場面があり、彼をモデルにしているのだろう。ただし外見は似せていない。それから約10年後、トランプ大統領の元でジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官が登場した。よくある名前ながら、さいとう先生も驚いたのではないだろうか。
事後を見通すゴルゴの言葉
ゴルゴが依頼を引き受けたことでボルトン長官は安堵する。しかしその直後にゴルゴは、「恐慌は人の心から生まれるものだ」の言葉を残して去っていく。政府の介入を拒んだキーパーソンをゴルゴが狙撃したことで、事態は大統領やボルトン長官の思惑通りに進むものの、株価の下落は止まらず政府は更なる追加政策を余儀なくされている。
同じようなゴルゴの呟きは『1億人の蠢き』でも見られるが、小手先の対処に過ぎないと思っても依頼を忠実に遂行するのがゴルゴの信条だ。それでも「無駄金を使うなあ」くらいは思っているのかもしれない。

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研 修治

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